忠を始末した後、凛は真雪を空いた一室へと連れて行っていた。 いくら憎い仇とは言え、血の繋がった親族。 まして絶命する瞬間を立ち会ったとあって、少なからずとも動揺していたからだ。 少し落ち着くまでと真雪に言い含め、その部屋で一人留守番をさせていた。 そんな真雪がいる部屋に凛が入ると暗闇に佇む真雪がいて、凛が来た事にも気付いていない様子だった。 「真雪、大丈夫か?」 「あ、あ……凛さん」 呆けたような真雪に、凛はため息をついた。 「人を殺す現場を見たんだ、ショックを受けるのはわかる。もう車に戻れ」 「嫌、です」 急にハッキリした口調の真雪に驚き、凛は目を見開いた。 「確かに少しは怖かったです……。でも違います、それでボーっとしてたわけじゃないです」 「じゃあどうしてだ」 「叔父さんがパパの事……。あんな風に考えていたなんて、思ってもみなかったから」 「そうか」 たちまち静寂が部屋を包んだ時、ドアが開く音が響く。 「凛、っと真雪、ここに居ましたか。探しましたよ、どこに行ってたんですか」 「ごめんなさい。でも私、大人しく待ってるなんて出来なくて……。本当にごめんなさい」 苦笑いを浮かべる榊は、真雪に危険が及んでないのを知り胸を撫で下ろす。 しかしこの部屋で落ち合うはずのメンバーが、自分と凛しか居ない事に気付き、凛に問いかけた。 「わかりましたよ、真雪には敵いませんね。凛、和泉は?」 「暴走してな、今頭を冷やさせてる。そろそろ来るだろ。ライカは?」 「ライカが見当たらないんですよ、もしかしたらもう御堂尊と接触してるかもしれませんね」 「顔洗ったら少し落ち着いた……って、何で真雪がここに居んだよ!?」 和泉は居るはずのない人物が居た事に驚いた。 取り戻したばかりの冷静さに揺らぎが生じる。 血飛沫を浴びないようにしたものの、まとわりつく血の匂いが真雪にバレはしないかと心配になった。 「待っていられなくて、ごめんなさい。けど最後まで見届けたい……。お願いします、私も一緒に。尊さんからちゃんと聞きたい、両親を殺した……理由を」 真雪はそれぞれに視線を合わせてから、大きく頭を下げた。 榊は凛と視線を合わせ、小さく頷いて大きくため息をつく。 「本当に真雪は仕方ない娘ですね、危ない事だけはしないでくださいね。これだけは約束です、さぁ顔を上げて」 真雪は下げた頭を上げ、満面の笑みを榊に向けた。 「はい」 つられて笑う榊の顔が、一瞬にして変わる。 「私は凛に話がありますから少し遅れます。和泉と真雪は先に行ってください、でも御堂尊へは接触しないでくださいね」 「了解。真雪行くぞ」 「では行きましょう、最後の仕上げですよ」 四人は颯爽とそのドアに向かい、最後の一幕が開けられる。 |