「どこから風穴を開けてもらいたいですか?ご希望があれば、どうぞ」 「や……めろ」 武島は震える身体で後ずさりを始める。 逃げ場などなく、ドアは榊の後方。 残るは自分の背に面した窓しかない。 この場に居ては確実に殺されると悟った武島は、振り返って大きな窓に向かって走り出した。 「グハァッ!」 逃げ出そうとした武島のアキレス腱目掛け、榊の銃口が火を噴く。 「誰が逃げて良いと言いましたか。どこに穴を開けてもらいたいか、聞いたんですよ?」 大きな窓から月明かりが優しげな光をもたらし、痛みに悶える武島をまざまざと浮かび上がらせた。 刺すような視線の榊と、武島の視線が絡まる。 榊はゆっくりと足首を押さえ苦痛に顔を歪める武島に近付く。 「さぁ、どこにしましょうか」 「……か、勘弁してくれ、もうしない、謝る!うあっ……クッ!」 「ヤクザが一般の方に手を出しておいて、今更ですよね」 銃口を向けられ、武島は観念したのか身体を強張らせ俯いた。 「武島さんも組員の端くれ、最期くらい顔を上げてください。――面白くないですよ」 「ガハッ!」 武島は右肩を撃たれ、うつ伏せに倒れこんでしまった。 榊はその身体をひっくり返すように、武島を蹴り上げて仰向けにさせる。 「苦しんでる顔をもっと見せてくださいよ。武島さん達は罪もない方々を殺め、一人の女性の人生を狂わせたのですからね、それなりの事を覚悟してもらわないと」 月明かりの元、苦痛に顔を歪める武島を榊は、まるで物を見るかのような様子で見ていた。 「ぐぅぅ……。っか、ハァハァ、一思いに……殺せ」 「武島さんの意見なんて必要ありませんよ。ゆっくりと命の炎を弱らせてあげますからね」 銀色輝く榊のコルトが武島を再び捉える。 消音された銃声と武島の叫びが入り混じりながら、徐々に銃声だけしか聞こえなくなった。 |