真雪はいつの間にこんなに強くなったんだろうか。
始めた出会った時の、あの女の子と同一人物には見えないくらい。
いや、元々このような強さを持った女の子だったのかもしれない。
花が綻ぶような微笑みの、儚い娘。
すぐ泣く、弱い娘。
そのくせ時折見せる、突拍子もない行動力を発揮させる娘。
ころころ変わる表情に、うちの住人達は一喜一憂してしまう。
皆の願いは、真雪の笑顔だけ。
「真雪、ここはまだ催眠作用のお香が残ってます。とりあえずこちらへ」
真雪との少ない過去を振り返り、目の前の真雪と照らし合わせていると、いまだ強い眼差しを向けているその女の子の背中を押すように部屋から出る事をほのめかした。
「催眠作用……ですか?」
「えぇ、関係ない方々には眠ってもらいましたから」
私は床に寝そべっているメイド達に目をやった。
それに続いて、真雪も視線を落とす。
「ねぇ榊、皆あの部屋に寝かせておけば良いよね……って、真雪ちゃん!?来ちゃったの?」
「ライカくん、来ちゃいました」
緊張感のない笑みで、真雪はライカに笑いかける。
肝が座ってると言うか。
今は緊迫した状況下には、変わりないのですが。
そんな真雪を見て、ライカが絶句するのも無理はないと思います。
惚けたライカの目の前で、真雪が掌を翳している。
「ライカくん?どうしたの、固まっちゃって」
「あ、あぁ、ごめんねー。まさかここに来るとは、思ってなかったから」
「どうしても自分の目で見たくて。邪魔にならないようにするから、……お願い」
――真雪。
そんな上目遣いで、瞳を潤ませてお願いなんかしたらライカは。
「仕方ないな〜、僕の側から離れちゃ駄目だからね!」
――やはり。
真雪は魔性の気でも、あるのでしょうか。