「んんー……」
真雪が目を覚ますと自室のベッドの上。
確かリビングに居たはずだと寝ぼけながら頭を捻る。
窓の外を見れば夕暮れ時で、水色の空が薄く赤みを帯びている。
どれくらい寝ていたのかわからず、ともかくリビングに行こうと思い、地に足を下ろした。
リビングに行けば榊と夕食の準備をしている凛が、何か話しこんでいる様子だった。
「凛さん、夕食の準備ですか?」
「随分寝ていたな」
口の端を上げ笑う凛に、それまでしていた会話を止め榊も笑みを零した。
「はい、いつの間にか気持ち良く眠ってました。何だかスッキリしちゃいました」
恥かしそうに顔を緩ませる真雪に、凛は調理を続けながら話しかける。
「リビングでうたた寝していたの、気付いてたのか?」
「え……、リビングにいたのは覚えてるんですけど、いつの間にか部屋に居て。私がどうして部屋に?」
「俺が部屋まで運んだんだ」
「えぇ!?ご、ごめんなさい、私、重たかったですよね」
気付かないうちに眠っていて、あまつさえベッドまで連れて行ってもらったと聞いて動揺を見せる。
知らぬ間に迷惑をかけてしまった事に、少し気が重くなり上がっていた顔が下がった。
「別に謝ることじゃないでしょう?真雪の事だから、昨日眠れなかったんでしょうしね」
「実は昨日は一睡も出来なくて」
真雪は少しバツの悪い顔で榊の顔を窺うと、困ったような笑顔で仕方ないですねと窘められた。
「真雪なんて軽いものだ、気にするな。もう眠くないのか?」
「ごめんなさい、ご飯食べてお腹一杯になったら、ついウトウトと。もうスッキリですから、今夜は……大丈夫です」
改めて今夜の事を口に出してしまうと、一気に身が引き締まる思いが駆け巡り、少し緩んでいた顔が強張る。
真雪が微かに漂わせる緊張感に、榊や凛から笑みが静かに引いていった。