榊と入れ替わりで最初にいた金髪の少年ともう一人、茶髪の少年が入ってきた。
「話終わった?」
「はい、ご迷惑かけて……すいませんでした」
あれだけ死に急いでいた自分を助けてもらった心苦しさから、真雪は謝罪を口にした。
そんな真雪の心情を察したのか、金髪の少年は重くなる空気を払拭するように明るい声で話し始めた。
「僕は望月ライカ、そんでこっちの茶髪が藤塚和泉、君は?」
「御堂真雪です……、和泉くんってどこかで見たような」
真雪は見覚えのある口元を見つめながらぼんやりと考えていると、ふと脳裏を過ぎる月光に照らされたあの光景。
「あんま見るんじゃねーよ、俺が減るだろ」
「……あっ、あの時ナイフ持ってた」
「お前……、あの時の俺を見てたのか?」
一瞬にして険しくなった和泉の顔に、真雪は身体が硬直していまうほどの威圧感を覚えた。
「仕事、見られたの?」
「かもな。その日の夜だもんな、榊が真雪を連れて来たのって」
渋い顔の和泉に対し、ライカは特に気にする様子を見せないでいた。
「ま、良いさ。榊もそれを知ってて真雪を連れて来たんだろ?」
諦め口調に早代わりした和泉はベッドに腰を下ろし、髪を掻き上げた。
若干面白くなさそうにしている和泉を横目に、ライカがベッド脇に膝をつき真雪の目線と合わせて話しかけた。
「あのさ、真雪ちゃん。病み上がりの真雪ちゃんには悪いんだけど、聞きたい事があるんだ。聞いても良い?」
「……はい」
「榊が言ってた。“死にたがり”だって。今の真雪ちゃんからは生気が感じられない、どうしてそんなに死にたがるの?今でも死にたいなんて考えているの?」
ライカがそう言うと、押し黙ってしまった三人。
「もう……、私には何も残ってないんです。生きる希望も、楽しい未来すら、何もないから……」
どこか悟ったような口ぶりの真雪を前に、心配そうな顔をするライカ。
それとは正反対に、和泉の眉間には深い皺が刻まれていった。
「なんで死にたいんだよ、お前は馬鹿か?死んだら楽しいことねーんだぞ?」
怒気を含んだ低い声の和泉に怯むことなく、真雪は小さく息を吐くと口を開いた。
「そうですね。わけもわからず、こんな話をしたら……そう思われても仕方ないです。でも、さっき森村さんにも話したんですが」