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愛しき殺し屋
照れ隠し



「もう勘弁してよ、もう何も言わないからさ!」

「どうだかな。九条の事だ、三歩歩けば忘れてるんじゃないか?」

「そんな事ないって!三歩歩けばって何!?俺は鶏じゃねーし!」

「終わりましたか?」

「榊!何が終わりましたか?だよ!俺は生きた心地がしなかったんだぞ!」


榊は口を尖らせる慎哉を見て笑みを漏らし、後ろに隠れるようにしていた真雪の背中を押して部屋の中へと入れた。


「それは自業自得と言います。意味、わかりますか?」

「馬鹿にして……、それくらい知ってるっての」


意気消沈な慎哉に満足したのか、榊は真雪を見て首を傾げながら、どうします?と聞いている。

榊に促され、意を決した真雪は和泉の前に向かって歩いた。
ついさっきの事が思い出され、和泉はバツの悪そうな顔でいて真雪の顔を見れないでいた。


「あの、和泉くん、さっきの事なんですけど」

「あ、あぁ……」

「さっきは部屋を急に飛び出したりして、ごめんなさい!気を悪くしましたよね」


虚を突かれる和泉は一瞬何が起きたのかわからなくなり、曖昧に返事をし瞬きを繰り返した。


「や、でも別に……俺の方こそ悪かったよ。邪魔とか言って」


真雪はかぶりを振り、僅かに赤くなった瞼を隠すように微笑んだ。


「榊さんから聞きました。和泉くんは和泉くんなりに色々思う事があるんですから。私の方が悪かったんです。あの……それで、お願いなんですけど」

「何?」

「邪魔にならないようにするので、私も連れてってくださ」


台詞を言い切る前に和泉は真雪の腕を引き寄せ、言葉を遮った。
一瞬だけ静まり返る部屋に戸惑いを感じた真雪は目を丸くするが、いまだに言葉を詰まらせる和泉が視線を逸らしながら重い口を開いた。


「連れて行くから。悪かったよ、あんな言い方して」


ぶっきらぼうな言い方をするものの、それでも、和泉から了承を得る事が出来、照れくさそうに話す和泉に真雪は笑顔を向けた。





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