「じゃあ決行日になったら教えますから、それまではこの間のような勝手な行動は謹んでくださいね」 榊は苦笑いを零し、真雪の微かに赤く腫れる瞼を指で撫で上げた。 真雪は驚いたものの、榊の冷たい指が熱を持つ瞼に気持ち良く、目を閉ざされるがままにしていた。 無言でいた二人。真雪の閉じられた瞼に影が落ち、唇には柔らかな感触。 気付き、目を開くと間近に端正な榊の顔がある。 顔が離れ困ったような顔で笑う榊に、なぜこのような事になったのかわからない真雪は、ただ顔を赤くするばかり。 「さ、榊さん……?」 「なんですか?」 「今……キス」 ベッドに腰をかけている真雪の腕を引っ張り、脇に立っていた榊の胸元に寄せた。 「少しだけこのままで居て良いですか?」 「榊さん……」 「真雪は私といる時はよく泣いていて、どうして良いかわからなくなるんです。もう泣き顔は見たくありません」 「……ごめんなさい」 「笑ってください。笑っていれば真雪にも幸せが来ますから、泣けばそれが逃げますよ?」 榊の台詞に思わず笑い出す真雪。 される行為や言葉は、慰めるもの。元気づけようとしたものだと、心が温かくなった。 いきなり笑い始めた真雪に驚いた榊は身体を離し、真雪の顔を窺う。 「どうしました?」 「榊さんから迷信じみた事を言われると思わなかったから……つい」 「これでも子供の頃は御伽噺なんか好きでしたよ、意外ですか?」 榊の意外な一面が見れ、大人な榊が少し子供のように見えた。 「いつも自分を保っていて、大人はイメージの榊さんの子供の頃はなかなか想像できませんね」 なおも楽しそうに笑う真雪に、少々照れながらも榊はそうですか?と答えた。 |