真雪の部屋の前で小さくノックをするが、返事が返ってこない。 「真雪良いですか?入りますよ」 声をかけて薄くドアを開ければ部屋の中は明かりが点いておらず真っ暗で、少しずつ暗闇に慣れた榊の目はベッドに向けられた。 ベッドの上には、小さく丸く盛り上がったシルエットが目に付く。 「明かりも点けないで……、点けますよ?」 スイッチを入れるとカーテンが開いていて、窓に明るい部屋の中が映し出される。 榊はそれぞれのカーテンを一つ一つ閉め、ベッドで丸くなってすすり泣く真雪の側に腰を下ろした。 「真雪、そのままで良いので話を聞いてください」 穏やかに話す榊に真雪は黙って何も発しようとしない。 小さく息をつき、榊は視線を真雪に向けたまま言葉を続けた。 「真雪は一緒に行きたいですか?」 「……行きたい、です」 榊の問い掛けに、真雪は自分の正直な気持ちを吐露する。 「では、連れて行きます」 思いがけない答えに真雪を覆っていた布団が捲られ、目を赤くした真雪が榊を見る。 「良いんですか?和泉くんは私を邪魔と」 「あれは……和泉は私の言いつけを忠実に守ってるだけで。私情を持ち込まないと言う私の言いつけをね。真雪がいると平常心でいられないから、和泉はああ言う風に言ってしまったのです。口は悪いですが、真雪の事を心配して言ったことでもあるんです。しかし少々失言でしたね。和泉の言葉は私の責任でもあります。嫌な思いをさせました、すみません」 「私こそ、話を良く聞かないで飛び出したりして。それに、和泉くんは私の事を心配してくれての言葉なんですよね。なら私は嬉しいです、失言だなんて言わないでください」 「そう言ってもらえると、私も嬉しいです」 真雪は赤くなった目を乱雑に擦り、榊に微笑みかけベッドの上で正座をし改まる。 細く息を吸い込んで心を落ち着かせ、榊に再度自らの願いを訴えた。 「邪魔にはならないようにします。私を連れて行ってください」 「えぇ、連れて行きますよ。ただし危ない事はしないでくださいね」 「はい」 真雪の件が片付きホッとするもつかの間、自分の部屋に置いてきた男達がどうなってるのか榊は少し心配していた。 |