「ライカ!……駄目だ、真雪は――……邪魔だ」
ライカの言葉に反応した和泉は歯を食いしばり、搾り出すような声で反対の意を唱えた。
邪魔と言われた真雪はショックを隠しきれず瞳に涙を湛え、榊の部屋を逃げ出すように出て行った。
「真雪ちゃん!和泉何で!?置いておいた方が心配じゃんか、和泉は心配じゃないの?」
「真雪がいたら仕事どころじゃなくなんだろ、少なくとも俺は……」
「榊の躾が良かったんだな、和泉はしっかりお前の言うこと守ってるな」
二人が静かに睨み合う中、慎哉が頬杖をつきながら紅茶をすすりポツリと零す。
「和泉は感情を前面に出すから、特に念を押して教えていましたからね」
「俺も連れて行っても良いと思う。もうバレてるんだから、屋敷が無人になれば真雪は一人でも行動を起こすだろう」
凛は両手でカップを持ち、揺らめく琥珀色の水面に視線を落とし、ライカに賛同する。
「凛まで何言ってんだよ!誰が真雪の面倒見るつもりだよ!」
「私の言いつけを守る和泉は偉いですが、こうなったら仕方ありませんよ」
榊の言葉に押し黙ってしまい、無言でいる和泉は辛い表情を浮かべた。
「真雪が御堂尊にされた事を言ってしまったことで、私情云々はもう言っていられない状況ですしね」
「俺、感情のまま流されてやり過ぎたら……。止めてくれよな……」
うなだれる和泉に凛が肩を叩く。
「心配するな、俺が止めてやる。そんなに気負うな」
「……ん」
「じゃあ真雪ちゃんは、連れて行くって事で良いんだね?」
ライカは、榊に確認をするべく視線を向けた。
「そうですね、真雪は連れて行くことにしましょう」