凛達がキッチンに向かい、部屋に残った榊達。
和泉とライカはお茶が来たら呼んでと言い残し、自分達の部屋へ戻った。
「さて、今日は仕事の話に来たんでしょう?」
「おぉ!忘れてた。俺を呼ぶくらいなら派手にやらかすつもりなんだろーけど。規模はどれくらい?」
「ターゲットは五人、無関係な人が五人です。恐怖と苦しみを与えてやるつもりですから、それなりに規模は大きくなりますね」
口角が上がるも目は笑っておらず、寒々とした榊の顔を見た慎哉は背筋が寒くなる。
「珍しいじゃないか、仕事に感情丸出しで。あの子猫ちゃん絡みだからってか?」
「さぁ、それはどうでしょう」
「今更隠しても……、あーはいはい、だから睨むなよ。時間と場所と教えてくれよ。全く……"仕事"の一言だけで俺を拘束出来るの、榊くらいだぜ?連絡よこしたなら、詳しく話せよな」
榊に怯えたようなポーズで両手を挙げ、慎哉は肩を竦める。
「あぁ、あの時は真雪の過去を聞いたばかりで、少々冷静さに欠けていたからでしょう。すみませんでしたね。今回のターゲットと別荘の見取図です、目を通しておいてください」
榊は机に置いてあるファイルから書類を取り出し、慎哉は手渡された書類を頷きながら目を通し始めた。
「んで子猫ちゃんの過去ってば?」
「言いたくないですね」
書類を一枚一枚捲り、視線を落としたまま榊に不意をつく。
しかしそんな意表をついた問い掛けに榊は動じる事は無く、笑顔で返した。
「ここまで言っておいて、ダンマリはないだろーよ」
書類を閉じ呆れたように息を吐く慎哉は、視線を榊に向けた。
先ほど作られた笑顔は一瞬にして冷ややかなものになり、凍てつく表情でいる榊に慎哉は言ってくれるとばかりの笑みで待ち構えている。
無言でいた時間は僅かではあったが、諦めた榊は嘆息したのち表情をそのままに口を開いた。
「面白い話ではないですよ。今回のターゲットは、真雪の両親を自殺に見せかけ殺した奴等。叔父夫婦からは愛情の欠片も感じられない牢屋のような生活と強いられ、そしてその息子、御堂尊は真雪の従兄弟であり、真雪を凌辱した相手でもあります。真雪の心を、ズタズタにした相手達なんです」