「僕の事、男として見てくれる?」
「ライカくん男の子ですから……はい」
「そうじゃなくて、真雪ちゃんを好きな男としてだよ?」
「え?それは……でも」
ライカの真雪を抱きしめる腕が強くなり、髪に埋めていた顔が首筋に当たる。
「別に困らせたいわけじゃないんだ。ただ……僕の気持ち知ってもらいたかっただけ。ごめんね」
ライカは手を離し、またいつものように笑い、再び“ごめんね”と真雪に告げた。
「あのね、僕がここに住んでる理由聞きたい?」
突然のライカの豹変についていけない真雪は、コクコクと頷くだけで声が出ない。
ライカは微笑みながらも、少し寂しそうな顔をして口を開き始めた。
「僕の家ってさ、暗殺一家なんだよね。僕の父さんと榊が友達でね、修行を兼ねてここで生活してるんだ」
「修行?」
「そっ、父さんが榊に僕を預けてどれほど成長するか楽しみだって。それで一緒に仕事してるの」
「そうなんですか、大変ですね。ご両親から離れて暮らすなんて寂しいですね」
俯き消沈した真雪は小さな声でライカの身を心配した。
その様子を唖然と見つめるライカは、感心したように大きく息を吐いた。
「……真雪ちゃんって、ズレてるって言われたことない?」
「言われた事はないですけど、……私のどこがズレてるように見えるんですか?」
真雪は不思議そうな顔を上げ、ライカに顔を向けた。
「そんな家で生まれ育ったんだ。僕は人を殺すの何とも思ってないんだよ?怖くない?」
「どんな事をしてても、ライカくんはライカくんですから、怖いなんて思いません」
呆然としながら言葉を噛み締め、ライカは真雪に手を伸ばした。
「そんな風に言ってくれると思わなかった、ありがとう。嬉しい」
「あああの……そんなに抱きつかなくても。でも……嬉しい、ですか?」
あたふたしながらも、ライカの言葉に疑問を投げかける。
「普通なら怖がるでしょ?殺しを何とも思わない奴なんて」
「それは人によります。私はライカくんを信用してますから。さっき榊さんに教えてもらったんです、悪い人しか仕事の対象にならないと……。なんて言って良いか……ともかく、ライカくんは怖いと感じたことありません」
抱きつかれた事に動揺する真雪は、自分が思っている気持ちを素直にライカに伝えた
たどたどしい言葉でもライカにわかるようように、嘘偽りのない心の言葉を。
「ありがと……」
ライカの腕の力が強くなり、小さく呟かれる。
何度もありがとう、と。