仕事の話が終わり、部屋に戻る前に真雪に会いに行った。
ノックをしても返事がなく、中に入ればもぬけの殻。
部屋に戻ろうとする榊を捕まえ、真雪がいない事を伝える。
「真雪なら私の部屋で眠っています。心配ないですよ」
そう言えばさっき、泣き疲れて寝てるって言ってたな。
一目見るだけでも見ようと榊と一緒に部屋に入れば、人の気配のない静かな部屋。
ベッドは綺麗に整頓されていて、誰かが寝ていたような形跡さえなかった。
「おや?いませんね」
「どこ行ったんだ真雪の奴」
ライカや凛にも聞いたが見ていないと。
屋敷内を皆で探したが、いる気配すらない。
榊が携帯を鳴らすが、通話中らしく繋がらない。
何かわからねぇけど、胸騒ぎがしてたまらなかった。
真雪がどこに行ったのかわからない、それだけで不安の色が一秒毎にそれが強くなっていくのがハッキリと感じ取れた。
「榊!」
「とりあえずGPSで所在の確認しましょうか」
榊はパソコンを開き、カタカタとキーボードを叩き始めた。
「どうやら持っててくれたみたいです」
「場所は!?」
「駅前のプリンスホテル」
「あいつ何勝手に出てんだよ!クソッ」
俺は真雪を迎えに行こうと、部屋を出ようとした。
「和泉待ちなさい、私も行きます。住所はわかっても、どの階にいるかわからないでしょう?ライカと凛にも来てもらいます」
程なく全員が集まり、凛の運転する車でホテルへと向かった。
「凛と和泉はホテル内部に入り、真雪を探して下さい。ライカと私で待機して携帯で連絡してみます。多分真雪は誰かと会っていると思います」
「了解、凛行くぞ」
「わかった、行ってくる」
車を降り、凛とホテルに走り出した。
自動ドアの緩慢な動きが俺の癪に障り、蹴ってぶち破りたい衝動に駆られる。
しかし後ろに控える凛の物言わぬ視線が感じ、頭に上った熱が一気に下がってくるのがわかった。
「ったく、どこにいるんだ真雪は」
髪を掻きロビーやラウンジを見渡すが、それらしき人物はいない。
ざわめく人の波がこれほどうざく感じた事は今までないくらい、苛々して仕方ない。
邪魔だ、邪魔だ。
俺が探している真雪以外、皆いなくなれば探しやすいのに。
睨むように目を鋭くし、俺は必死に真雪を探す。
「凛!真雪、部屋に入ってるかもしれないよな。どう探せば」
「榊から連絡があるまで待つ。それまで、探せるところを探すぞ」
真雪の安否を心配し、暗いトンネルの中で彷徨うように真雪と言う光を俺は探していた。
「どこにいるんだよ、真雪……」