ライカが認めているだけあって、ピンク色になっている患部を見るや否や。
「これくらいなら大丈夫だな、ただ服が摺れる(すれる)と痛みが伴うだろうから、ガーゼで保護しておく」
軟膏を塗布したガーゼとサージカルテープで、患部を覆う。
「2〜3日で治るし、痕にもならないだろうから心配ない」
「ありがとうございます、凛さんて何でも出来るんですね。お料理も、中庭の花達も……手当てまで完璧で」
凛の包帯を巻く手つきを眺め、真雪は感嘆の息を漏らした。
「完璧な人間なんていない。互いに好きな事をして、ここの住人と苦手な部分を補い合って生活してるだけだ。料理は元々好きだし、植物は癒しを与えてくれる。手当ては仕事の内だな」
「それでも、素人の域を超えているように見えます。中庭の花達は、とても見事でした」
「そうか?そんな風に褒められたのは初めてだ」
凛は少し顔を緩ませながら出していた医療用品を片付け救急箱を閉じ、ドアの鍵を開けに行く。
「終わったぞ」
凛の言葉が早いか扉が開くのが早いか、二人は間髪入れず凛の部屋になだれ込んで来た。
「真雪!凛に何もされなかったか!?」
「真雪ちゃん大丈夫!?無事!?」
「は、はい。何もされなかったって言うか、手当てしてもらっただけですよ?」
「良かった〜。」
胸を撫で下ろす二人に、凛は横目で睨んだ。
「今日の屋敷の案内は終わりにしておけ。まだ多少痛むはずだからな」
「はいはい、了解。真雪部屋まで連れてってやる、行くぞ」
「凛さん、本当にありがとうございました」
和泉に促され、真雪は凛に一礼をして部屋を後にした。
部屋に残ったライカはソファに浅く腰を下ろし、凛に不躾な視線を送る。
痛いほどに感じる視線に、凛はため息を漏らし一瞥した。
「何か用か?」
「凛にちょっとお話〜」
「なんだ」
ライカの相手をだるそうに机のノートパソコンを開きながら、ライカに目線を配る。
「今日の凛は随分カッコいいなーって思ってさ。いつも冷静沈着でクールなのに、真雪ちゃんが紅茶零したときなんであんなに動くのさ。凛も真雪ちゃん欲しいの?」
「別に、いつもの俺だったと思うが?それに真雪は榊が連れて来た大事な客だろう。それ以上でもそれ以下でもない」
眼鏡をかけ、本格的に仕事をし始めた凛にライカはこれ以上何を言っても無駄だと悟り、お邪魔様と言って部屋を出た。