ドアがノックされると、ライカが明るい声で飛び込んできた。
「真雪ちゃんご飯ができたよー……って、榊も居たんだ」
「居てはいけませんでしたか?」
そんな事ないけどーっ、と、言いながら部屋を後にするライカに真雪と榊が後に続いた。
広々としたリビングに通され、同じフロアにあるダイニングテーブルには暖かそうな食事が用意されていた。
テーブルには和泉が先に席についていて、ライカはその向かいに腰を下ろした。
真雪が目覚めてからは病み上がりだからと、消化に良いスープやおかゆを榊達が部屋まで運んでいたため、住人との食事は初めてだった。
大勢での食事は久しぶりだと、両親が生きていた頃の記憶が懐かしく蘇る。
席に着こうと椅子に手をかけると、見たことない人物がキッチンから出てきた。
少し長めの黒髪の男は、無表情な顔で真雪を見つめる。
戸惑い始める真雪に、榊が苦笑いで答えた。
「真雪、これはもう一人の同居人です。凛、自己紹介してもらえますか?」
「……竜崎凛」
真雪に視線すら合わせず素っ気無く言い放つと、両手に持っていたスープをテーブルに置いた。
「御堂真雪です、よろしくお願いします」
深々と頭を下げてから凛を見れば、押し黙ったまま丈の長いソムリエエプロンを外し椅子に座った。
「久々の食事でしょう?凛が腕を振るってくれましたから、早速いただきましょう」
「……これ竜崎さんが作ったんですか?凄い……」
コース料理のように、スープや前菜、パスタ、メインに至っては魚のムニエル。
盛ってある皿は、丁寧に緑色のソースで綺麗に彩られていた。
「立ち話もなんですから、早く席に着いてください。冷めないうちにいただきましょう」
榊に促され、真雪は湯気の立つ料理を目の前に椅子に座った。