「考えってなんだ?」
一人取り残された和泉は、真雪の台詞の意図がわからなく、徐に体温計取り出し見る。
「38,7℃……、久しぶりじゃね?こんな熱出すの。道理でダリィわけだよ」
体温計片手にため息をついていると、予告無しに部屋のドアが開いた。
「和泉〜、駄々っ子になって真雪ちゃん困らせてるんだって〜?」
「うわっ、ライカ。……もしかして」
和泉は勢いよく起き上がり、ベッドに近付くライカを目で追う。
その後ろにはしてやったりと笑う真雪が居て。
「助っ人に来てもらいました」
「……マジかよ」
ゲンナリとする和泉は大人しくなり、ベッドにうなだれて沈み込んだ。
真雪に我儘を言って困った顔を見たいだけだったのだが、ライカにそんな事を言ったら妙な薬を飲まされてしまいそうで。
「はいはい、真雪ちゃん困らせないのー!体温計出したんだね。……熱あるじゃん!ちょっと、和泉大丈夫!?」
ライカが枕元に置いてあった体温計を持っていると、真雪は隣からそれを覗き見る。
デジタル表示された数字を理解すると、真雪の顔が一気に青くなる。
「こんなに熱があるじゃないですか!和泉くん、絶対寝ててくださいね」
「俺の普段の平熱高いから平気だって、そんな心配する事じゃねーし」
「とりあえず、これだけでも貼ってください!」
真雪は冷却シートを取り出し、和泉の額に迷いなく貼った。
不意打ちを食らった和泉は、なすがまま。
「こんなガキがするようなの貼るなよ」
不貞腐れた言い方をする和泉は、疲れた様子で布団を被り始める。
「良いから、真雪ちゃんの言う事聞きなよ?仕方ないから少しの間だけ、真雪ちゃんを貸してあげる」
ライカは和泉の耳元で、真雪に聞こえないようにコッソリと耳打ちをした。
「別にライカのじゃねーし、それに看病だってしてもらわなくても」
ブツブツと喋る和泉は、徐々に奥深くへと潜り込んだ。
そんな和泉を見て、ライカは笑みを零す。
「素直になりなよ。じゃあ、真雪ちゃん和泉の事お願いね。また何か駄々っ子になったら教えてね。和泉が良い子になる薬があるから、それ注射してあげるね」
「はい。あの、良い子になる注射って」
「内緒」
小さく小首を傾げながら、ライカは微笑んだ。
どんな注射なのかわかっていた和泉は、顔を青ざめさせていた。
「てか、飲み薬じゃなくて、注射かよ」
布団の中で丸くなる和泉は、小さく呟き、素直に真雪の言う事に従おうと決めていた。
それを知らない真雪ばかりが、不思議そうな表情でいる。
ライカが部屋から去り、真雪は体温計を片付け、ベッドに横たわる和泉に言葉をかける。
「じゃあ、これからおじや作って来ます。大人しく寝ててくださいね」
「……了解」
布団から手を出し、ヒラヒラと真雪に向けた。
真雪が部屋を出ると、騒がしかった室内が途端に静まり返る。
「何か……眠……」