「あー、だりぃ。何か関節が痛ぇし」
「顔が赤いですね、風邪でもひきましたか?」
榊は和泉の額に掌を当てる。
「榊の手、気持ちイー……」
目を閉じ、和泉は榊の冷たい手の感触を心地良く感じていた。
「和泉、今すぐベッドへ行きなさい。熱がありますよ」
榊に急かされるように背中を押され、戸口へと歩いていった。
「熱〜?んー、んじゃあ、寝るか」
目が虚ろな和泉は、おぼつかない足取りでフラフラとしながら榊の部屋を後にし、自室へと向かった。
部屋に着いた途端ベッドへ身体をドサッと沈ませ、少し汗ばんだ額を掌で覆う。
「熱あるなんて聞いたら、マジで熱くなってきた。……アチィー」
ベッドの上でグッタリしていると、ドアを遠慮がちにノックする音が聞こえた。
「和泉くん、真雪です」
「んー」
和泉から反応があり、真雪は部屋に入って行った。
そこには心配そうに和泉を見つめる真雪が、トレイに薬と水を持って立っていた。
「大丈夫ですか?」
「たぶん。ただ身体がアッチィし、関節も痛てぇ」
真雪はトレイをテーブルに置き、体温計を取り出した。
「熱、計ってみてください」
「いいよ、面倒。熱あるのわかってるし」
怠そうに手をヒラヒラと動かし、和泉はやんわりと断った。
が、しかし。
「ちょっ、真雪、俺病人……」
「和泉くんは黙っててください。面倒なら、私が計ってあげます!」
真雪は和泉のベッドに乗り、布団を剥ぐと、和泉のシャツを強引に捲ろうとする。
露になる鍛えられた腹筋を見た真雪は、一瞬恥かしくなり手が止まる。しかし緊急事態だと自分に言い聞かせ、赤くなる顔を気にしつつ、弱る和泉の脇へ体温計を差し入れた。
ベッドから降りた真雪は、乱された布団を和泉に掛け直した。
「今は凜さん出掛けてて、私が母親代わりなんです。言う事聞いてもらいますよ?」
真雪の勢いに気圧された和泉は、驚いた様子でウンウンと小さく何度も頷いた。