今日は朝から悪い事が続いた。
「この有様は一体……」
朝食後に裏庭に来てみれば、九条から貰った薔薇が荒らされていた。
ちょうど蕾が膨らみ始め、これから綺麗に咲くと思ってた矢先。
「誰がこんな事を」
俺は枝が折れている部分を剪定してやり、膨らみかけていた蕾を切り取った。
ため息混じりに切り取った蕾を集めていると、二階からライカが俺に話しかけた。
「りーん、さっきね〜、猫とカラスが喧嘩してその薔薇目茶苦茶にしてたよ〜。すっごい激しい喧嘩で、つい見入っちゃった〜」
身振り手振りで猫とカラスの喧嘩の様子を再現するライカに、俺は何も言えないでいた。……いや。
――見ていないで、止めろ。
と言いたかったが、あまりの無邪気さに何も言えなかった……と言った方が正しい。
キッチンに戻り、切り取った蕾を小さなブーケにして、グラスに飾る。
「これで少しは楽しめるだろ」
細く息を吐き、お茶を飲もうとカップを取り出す。
「……おかしい、ここに置いてたウェッジウッドがない。一体どこに?」
キッチンに置いてあった筈のウェッジウッドのカップとソーサー。
葡萄のレリーフが施されているクウィーンズ・ウェア。
ホワイト・オン・ウェッジウッドブルーの葡萄と蔓のレリーフのバランスが、真雪に似合うと思って用意した。
専用のカップにしてやろうかと思っていたのだが。
それに今朝言ってしまったんだよな。
「真雪、お前に似合うカップを買った。後で見せてやる」
「本当ですか!?凄く嬉しい、楽しみにしてますね!」
真雪が見つけて勝手に持って行く事は、まずない。
じゃあ一体誰が?