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空想庭園



香夜ちゃんが気になって、そして好きになってからどれくらい経ったのかな。

「おおよそで一年と二か月」
「あれ?僕、声に出してたー?」

心の中で呟いたと思っていた僕は、後ろにいたユベールの方に振り返った。
そこにはうんざりとした表情でいるユベールがいて。

「そんな不機嫌そうな顔しないでよ。そっかあ、もうそんななるんだー」
「……アニスから惚気話を延々と聞かされていては、こんな顔にもなる。第一、気になって好きになるまでの期間はそれほどなかったはずだ。それからすぐに香夜を拉致してきたんだからな」
「拉致だなんて、人聞きの悪い。僕達は契約をしただけ。香夜ちゃんが自分で決めた……、あれ?最初は香夜ちゃんが決めたけど、途中でユベールが強引に印を押したんだったね」
「それはアニスがもたもたしていたからだ。生きる事を選んだ香夜をアニスは騙してでも契約するつもりだったんだ。俺のせいにするな」
「僕が遊んでる途中で痺れを切らせたんじゃん。まあ、結果オーライだからどうでも良いけど」

僕はくるくるとイスを回転させて定位置に戻り、机に肘をつき頬杖をついた。

香夜ちゃんと一緒に住み始めて、ようやく結婚の運びとなった。
そして昨日は初夜で、初めて香夜ちゃんと一つになれた。
目を瞑れば蘇る香夜ちゃんのしなやかな肢体。慣れないセックスは香夜ちゃんの羞恥心をかなり煽っていたようで、僕の指先一つで簡単に様々な表情を見せていた。

普段僕に噛みついていたけど、ああいった大人の行為になると途端に生娘のような感触を持つ。
そんな香夜ちゃんがいずれは僕の趣味満載のセックスを楽しんで受け入れてくれるようになるだろう。
でも、すぐにはならないのはわかる。ノーマルなセックスですらあんな状態なんだもの。だからゆっくりとじっくりと手間暇かけて、僕が育てていかなくちゃ。

想像の中では赤い縄化粧を施された香夜ちゃんが目隠しで柱に括る。
ギャグを噛ませた口からは透明な液体がだらしなく糸を引きながら滴っていて、その滴りを指に掬って縄で縊りだされた胸へと擦り付ければ、香夜ちゃんは呻き声を上げる事だろう。

妄想が妄想を呼び、頭の中の香夜ちゃんはどんどん乱れていった。
そんな事を考えていれば自然に緩んだ口元が妙に心地良かった。妄想を僕の手で現実に変える事が出来ると思えば、こんなに嬉しくて楽しい事はない。

……ただあれだけウブそうにしてたくせに、バージンじゃなかった。
案外バージンかもしれないと勝手に思っていたけど……。いや、あの鈍さじゃバージンしかないと思っていた。

「香夜ちゃんのくせに、生意気なんだから」

思わず口に出た言葉は嫉妬心から。
いつ、どこで、誰にバージンを捧げたのか、今度じっくりと聞かなくちゃ。そして香夜ちゃんの何かしら初めてを僕も貰わなくちゃ。

ああ、それに一つ僕も失念していたアレだ。
まさか香夜ちゃんが指摘してくると思わなくって、言われた時には少し悔しさがあった。

プロポーズは衝動に駆られて言ってしまった。もう少し段取りを良くしてから行くつもりだったのに。
それに僕との結婚でオロオロしていて指輪の事なんて頭にないだろうと思ってたから、後からゆっくり香夜ちゃんと選びに行こうって考えていたのに。

知っていた事を準備不足のために後から渡すよなんて、格好悪くて言えなかった。
香夜ちゃんにしてやられた感でいっぱいだ。

「ねえユベール」
「なんだ」
「僕の給料の三か月分っていくらかな?」
「別に指輪は三か月分じゃなくても良いだろう?」
「よく指輪だってわかったね」
「香夜との惚気話を散々聞かされた後に給料の三か月分と言われれば容易に想像できる。……それより、仕事をしろ」
「うーん。まあ、僕の方で適当に決めようかな。三か月分じゃなくて良いなら、好きな事出来るしなー」

頬杖をついたまま目を閉じて色々と考えてみる。
ユベールが何か言っているみたいだけど、僕の頭の中は香夜ちゃんでいっぱいになっているから全く気にならない。

ただ、昨日言われた香夜ちゃんの言葉がずっしりと圧し掛かる。

「結婚したのに、どうして指輪がないんですか」

悔しい。
いつもぼんやりとしてるくせに。こんな時に限って痛い所を突く。

どうせ痛い所を突かれて面白くない思いをさせてもらったんだ。
香夜ちゃんを驚かせてやらなくちゃ割に合わない。

残るはデート。
予算に際限さえなければ、僕の思った通りの物をプレゼント出来るから良いとしても……デートねえ。

一緒にでかけてはいたけど、食材の買い出しやアデルバードのお店に行ったりするくらいで、思えばデートらしいデートはしてなかったかも。
僕を焦らせた罰として、香夜ちゃんには忘れられないデートを演出してやりたい。

やる事は色々出来た。
さあて……、どうしようかな。







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あきゅろす。
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