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空想庭園



この部屋に来てから、さほど時間は経っていないけど。このフロアに来てからは時間がそれなりに経ってはいるわけで。
そして……私は今仕事の時間なのだが……。

怒れる先輩の顔が思い浮かぶ。
せめて遅くなる事だけでも言えたら、ちょっとは違うのに。

喋る事は出来ても、身体を動かす事が出来ないから、本当に何にもならない。

ユベールはここに居ろって言ったけど、一体いつまでこうしていなければならないのか。
静まり返る部屋は退屈だし、身体を動かせない不自由がとても窮屈だし。

「せめて暇つぶしくらい用意してくれたって」

退屈すぎたせいで、グツグツと湧いて来る文句。

「そもそもあんな変態と知り合いとか。同族なんだな、あの変態緑は」

寝返りすら打てなくて、苛々してくる。

「どうしてこんな事に巻き込まれなきゃならないんだよ」

ここで待てって言われたけど、一体いつまで待てばいいのか。

「早くどうにかしてよ!」

叫んだと同時に重い扉が、音を立てて開いた。
そしてそこにはユベールと、首輪に繋がれたあの変態だった。

「……なにそれ」
「こうでもしないと、呪い欲しさに誰彼構わず飛び掛かるからな」

ジャラリと重そうな鎖を引き、変態はユベールにされる事を頬を染めながら素直に従っていた。

「何かしら、この倒錯的なプレイ。超刺激的なんですけど。ユベール、四つん這いになれば良い!?」

そして何やらとても喜んでいる様子。
そうか、こいつは真性のドMなんだ。

「ほら、早く月胡の枷を外せ」
「外したら、あたしにご褒美くれる?」
「既にこれが褒美だろう」

ユベールが変態の足を蹴って膝をつかせれば、鎖をギリギリと強く引いて首を締めあげた。

「……軽く、逝ける。しあわ……せ」

恍惚とした表情で、尚もユベールを見つめる変態。
……私は男同士の何のプレイを見せつけられているのだろうか。

「死ぬのは良いが、早く枷を外せ」
「わかったわ。だから、外し終わったらもう少し」
「いいからさっさとやれ」

変態が私の足に触る。
つま先から膝まで撫でるように往復する気持ち悪い触り方。両足を撫で終えると、急に足が軽くなって妙な脱力感に見舞われた。
そして同じように腕も撫でられると、力が抜けたようになった。

「少ししたら力が戻るわ。普通に歩けるようになるし、手だって使えるわ。ごめんなさいね、テイクアウトしようとして」

跪く変態は舌なめずりをしている。
何やら言ってる事と、態度が180度違っているような気がすると思っていると。

「用は済んだ。……リリー、この地に二度と降り立つな。俺達の前に姿を現すな」

身体を足蹴にされながら鎖を引き寄せられれば首枷が苦しそうに締まるけど、変態はやっぱり嬉しそうにしている。
そしてまた扉が開いたと思えば、今度は変態緑が入って来た。

「アニス、これを城の地下牢に連れて行け」
「えー、僕ー?」

心底面倒そうに嫌がる変態緑が、チラリと変態に視線を向ける。でも変態はそんなにお構いなしで、ユベールに釘付けになっている。

「リリーをここに置いても良いが、香夜に何かあっても知らないからな」
「十分脅しておけば大丈夫じゃない?リリーだって馬鹿じゃないでしょ?」
「俺はあれからずっと城どころか魔界にも行ってない。これからも行かないつもりだ」

変態緑はどこか観念したのか、大きくため息をついた。

「……まぁ、僕の身内の事でユベールに迷惑かけちゃったからね。仕方ないなぁ……、ほら行くよリリー」
「あたしは王子よりもユベールの方が!」
「僕だって嫌だよ。男であろうが女であろうが、香夜ちゃん以外にこんな事したくないなぁ。本当、これが香夜ちゃんだったら最高なのにさ。嗚呼……、面白くない」
「苦し、苦し……」

変態緑は鎖を短く持ち、四つん這いになる変態の首を持ち上げるようにして歩いていた。



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あきゅろす。
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