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空想庭園



入ってすぐに叫ぶだけ叫んで出た社長室。
カヤちゃんがついに変態緑の病気に侵されて変になっていた。

きっと結婚したなんて話も、その病気のせいだ。絶対にそうだ!

社長室のドアを叩きつけるように閉めれば、ユベールの手にかかっていた変態女が灰になって廊下に散らばっていた。
さっきまで怒りで興奮していたのに、目の前の出来事に急激に冷やされてしまった。

「……殺した、の?」
「ああ」
「ユベールは、殺す事を何とも思わないの?」

殺生を見るのはあまり好きな人がいないと思うけど。

「……何を思えと言うんだ」

手に着いた灰を払いながら、ユベールはその場を去った。
あいつはきっと感情が麻痺しているんだろう。
第一笑っている所を見た事がない。

あ、でも怒っている所はたまに見た事があるな。
こう……青筋立てて、眉間に皺を寄せて、目が吊り上がって。

廊下に広がる灰を眺め、とりあえずこれをどうにかしようと給湯室へと向かった。
でも掃除道具がなくて、ゴミ箱を一つ持って廊下に戻る。
こんもりとした灰を手でかき集めながら、ゴミ箱に移していく。

「……なんでユベールの尻ぬぐいみたいな事をしなくちゃならないんだ?」

……そして、この灰はどうしよう。
変態緑には聞きたくないし、ユベールはどこか行ったし。

ゴミ箱?トイレに流す?

……これ、一応さっきの変態女の灰、なんだよね。
気持ち悪いから、ゴミ箱に捨てて後は知らない振りしておこう。

そう思ってゴミ箱にザッと投げ入れて、元の給湯室へと置いた。ついでに手を洗って、持ち場に戻ろうと思っていたら空気の蠢く気配を感じた。

「……え、何」
「ただいまぁ、あたしのご飯」

私の背後、それも頭上から声が聞こえた。

「……っ!?」

咄嗟の事で逃げようと思っても逃げられず。
振り上げた手を変態女に捕まえられてしまった。

……いや、今は女ではなく男の恰好をしているから、ただの変態でしかない。

「変態!触るな!」
「やだぁ、リリーって呼んで?……呼ばないと、もっと酷い事しちゃうけど?」

さっき捨てた灰が少しずつ身体の線を作り、変態の身体が元に戻った。

虚をつこうとしたけど、逆に腕を後ろ手に捻られた。
いくら変態だとしても、身体は男だ。大きな手の感触から、簡単に逃げられないと悟らされる。

「……離してってば!」
「殺されたばかりで体力がないの。だから、栄養補給させてもらうわ」

捻られた腕をそのままに、床に身体を押し付けられた。

「それからデザートにユベールでもいただこうかしら?」

後ろ手に何かに拘束されたようで、ビクともしない。
そのまま喉元に手を伸ばされ、長い爪でなぞるような動きをみせた。
気持ち悪さに喉をのけぞらせれば、そこに生暖かい舌が下から這い上がってきた。

「……きもち……わる……」
「ふふ、大丈夫よぉ。すぐに気持ち良くしてあげる。きっとあなたも虜になるわよぉ」

うつ伏せのまま足も撫で上げられ、苦しい体制を強いられれば私の口は自然と開く。
それを目を細めながら、変態は舌なめずりをしていた。

「あの子は駄目だって言われたけど、あなたならテイクアウトしても良いのかしら……。でも少し食べないと、私も持たないからいただくわね」

何か不穏な事を言ってるのはわかるけど、後ろからマウントを取られて後ろ手に拘束されて、尚且つそっくり返るような首がとても息苦しい。
小さく細切れな呼吸しか出来ず、意識が朦朧とする。

「いただきまぁす」

本当に呪いを食べてるのかわからない。
私の下唇を食むようにしていたアイツが、開いた口に舌を差し込んで舐め回してきた。

「……ん、美味しい」

苦しい体勢に、息苦しい行為。鼻から呼吸をするのがやっとで、抵抗する事なんて出来ない。
一体、どうしてこんな事に……どうしてこんな目に合わなきゃならない……。




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