道化の国
疲弊
「そんな所で抱き合っていないで、あちらの静かな場所にでも移って話をしてみたらいかがですか?」
マスカーレイドを睨み白露にしがみ付く花月は我に返り、慌てて腕を離す。
眉をしかめる白露は刀を納め、小さく息を吐いた。
「花月、話がある。・・センリ、何処か部屋を借りられるか?」
「花月が使っている部屋へどうぞ。」
白露が花月に視線を向けると、瞳を泳がせ白露の袂を掴んだ。
「こっちだ・・。」
リビングから出てゆく二人の背を見やり、センリは漸く一仕事を終えたとばかりにソファにもたれた。
「あの二人も面倒よね、見ていて苛々して仕方ないわ。」
「そう言わないでください。白露や花月の性格上、仕方のないことですから。」
「あら、随分寛大ね。」
マリカは足を組みなおし、意外だとばかりに声を上げた。
「これで丸く収まるなら、寛大にもなります。」
「俺の問題も丸く収めてくれ。」
「そんな事は私の知った事ではありません。」
横槍を入れるマスカーレイドをサラリと流し、美咲の腰を抱き寄せた。
「あとで話を聞くって言ったじゃん!」
「そんな事言いましたか?・・・その内そんな噂なんてなくなりますから、大丈夫ですよ。」
「酷い・・・。」
マスカーレイドはソファの上で丸くなり、顔を手で覆った。
そんなマスカーレイドを気にする事無く、センリは美咲の首筋に顔を埋めた。
「センリ、マスカーレイドを助けてあげ・・。」
くすぐったく感じた美咲はセンリから離れようと胸に手を当て、顔を覗き込もうとすると強い力でそれを拒まれる。
「少し疲れました、・・・このままでいてください。」
普段疲れた様子を見せないセンリに少々ばかり驚き、美咲は自分にもたれてくるセンリを抱き締めた。
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