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道化の国
月長石と真珠の関係


うな垂れるマスカーレイドを他所に、センリは花月の抱える袋に視線を落とした。


「花月、それは何ですか?」

「これは・・・、さっきそこの店で。」


花月は抱いていた袋から小さな箱を取り出し掌に乗せると、優しい笑みを零す。
白露を思っているのか、慈しむように小さな箱を見つめている。


「あのね、花月が白露にお土産を買ったの・・、と言っても、お店の人が私の顔を見てお金は要らないって言ってくれて・・、貰ったの。・・・貰っても良かったのかな?」

「あぁ、良いのですよ、私がいるのですからそのような心配は必要ありません。」

「そっか・・、あのね、花月が選んだ石を見てもらいたいの。センリ、宝石に詳しいでしょう?どんな意味があるのか・・花月に教えてあげてくれる?」

「構いませんよ。・・花月が選んだ石は何ですか?」


掌に乗せた小さな箱を見つめたまま動かない花月にセンリは問うと、囁くように応えた。


「わたくしは真珠、白露にはムーンストーンを・・。」


花月の言葉を聞き、センリは優しい笑みを零した。


「貴女方は何処までお似合いなのでしょうね・・・、そうですかムーンストーンと真珠・・。」

「何?センリ、何でお似合いなの?」


瞳を輝かせる美咲に、センリは穏やかな口調でゆっくりと話し始めた。


「それはですね、ムーンストーンとは月長石と呼ばれていて、月の宿る石と言われています。そして、月の雫が落ちて真珠が生まれたと言われています。」

「すごく素敵!」


輝いていた瞳が更に煌き、美咲は指を組み合わせて感動に打ち震えていた。
自分の事のように喜びを噛み締める美咲を見て、センリは愛しげな微笑みを向けた。


「花月は無意識にこの石を選んだのですか?」

「ムーンストーンの光が・・、白露に似ていて、穏やかに闇を照らす月に似ているから・・、だから選んだ。」

「貴女と白露は遠い昔から何か繋がりがあったのかもしれませんね。それこそ、運命の糸で結ばれているのかもしれません。」


優しく諭すようなセンリの口ぶりに、花月の心が少しずつ弛緩してゆく。
しかし、次に発せられたセンリの言葉に花月の表情が一変する。


「花月はもう少し白露を信用してみてはいかがですか?白露は白露なりに色々思う事があるのですよ、きっと。」

「何を・・・思う事があるというのだ?・・・わたくしにも言えないような事を考えているのに、信用しろというのか?」

「確かに言えない事かもしれませんが、白露の性格上どうしても言えない事なのです。ですから・・。」

「全くわけがわからないではないか!何なのだ!?白露の抱えている何かを、センリは知っているかのような口ぶりではないか!センリには言えて、わたくしには言えない事とは一体何なのだ!?」


霞がかった物言いのセンリに、花月は眉をしかませ唇を固く結んだ。




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