道化の国
面白い話
「花月、面白い話があるのですが・・、聞きたいですか?」
「面白い話・・?」
センリは満面の笑みで花月にそう言うと、美咲に妖しい笑みを一瞬覗かせた。
「今・・ほら、あそこでやる気がなさそうに歩いている人物、誰だかわかりますよね?」
センリは自分が来た道を指差し、ゆらりゆらりと歩くマスカーレイドに視線を向けた。
「・・・・・あれはマスカーレイドじゃないか、それがどうしたんだ?」
「実は・・彼は女性よりも男性に興味があるようでして・・、男娼紛いの事もしているらしいのです。」
「だんしょう?・・・だんしょうとは何だ?」
「倭の国の言葉を借りれば、陰間・・ですよ。そして・・白露を狙っているとか・・・。」
センリの言葉に顔面蒼白になる花月は、近くまで寄ってきたマスカーレイドに目を見開いた。
その様子にほくそ笑むセンリは花月から離れ、美咲の隣に腰を下ろした。
「ねぇ、何の話してるの?」
「ひいやあああぁっ!ま、マスカーレイド!お、お前は・・、女だけでは飽き足らず、おおお男にまで手を・・。」
「はい?何の話・・・・・、まさか・・、センリ?」
「花月を元気付けてやろうかと思いまして・・、いけませんでいたか?」
「“いけませんでしたか?”じゃないよ!どうして嘘を吹き込むんだよ!もうこのネタを引っ張るのは止めてよ!」
完全に怯えている花月は美咲の腕にしがみ付き、力強い瞳でマスカーレイドを睨みつけている。
「白露には手を出すな!」
「俺は女の子が好きなの!冗談でも男に・・まして白露になんて恐ろしくて手なんか出せないよ!」
「白露はわたくしのものだ!」
「ちょっとセンリ〜!」
落胆するマスカーレイドの台詞に聞く耳を持たず、花月は吠えるように叫ぶ。
一向に解けそうもない誤解に、マスカーレイドは蹲り顔を手で覆った。
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