道化の国 合流 店を出た美咲達はベンチに腰を下ろし、一息ついた。 「花月良かったね、白露にお土産ができて。」 花月が胸に抱いた包みを指差し、美咲は自分の事のように嬉しそうに微笑む。 「美咲はすごいな、よほど常連なんだなこの店。」 「私がすごいんじゃなくて、センリのおかげだと思うよ。」 いざ花月が支払いをしようとすると、店主は美咲を見て微笑むだけで、品物を綺麗に包装して渡してくれていた。 お代は結構です、と一言付け加え。 「きっとセンリと一緒にいつも来てるから、顔を覚えられたのかも。」 「センリは・・美咲に優しいんだな。」 「え、どうして?」 「店主に顔を覚えられるほど、この店に連れて来てもらっているのだろう?・・」 「花月は白露と出掛けたりしないの?」 花月は首を横に振り、小さく息を吐き出した。 「ここ最近はろくに話もしていない。・・・久しぶりに話をしたかと思えば喧嘩腰になってしまって、・・・益々顔を合わせ辛いのだ。」 「それで・・倭の国を出てきちゃったの?」 「・・・それが決定打かもしれない。わたくしはこんな物を持っていても、白露に渡せるのか・・それすら心配だ。」 花月らしからぬ気落ちのほどに、美咲は伏せ目がちに肩を落とした。 「美咲。」 美咲が俯いていると靴音を響かせ、センリが微笑みを湛えて歩み寄って来た。 顔を上げそれに返すように美咲も笑みを見せるが、花月が気がかりで少しばかり作り笑顔になってしまう。 「助かりましたよ、美咲のメモのおかげでこちらに来る事が出来ました。」 「役に立って良かった。」 美咲の身体を抱き締め、センリはその存在を確認する。 浮かない顔の美咲はセンリの胸を押し、花月を心配そうに見つめた。 美咲の視線の先には、表情を曇らせる花月が袋を抱えて小さくなっていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |