道化の国
涙
一通り遊んできたセンリ達は、花月の待つ城へと帰ってきた。
城門の側にトボトボと俯きながら歩く花月を見つけ、美咲は声をかけた。
「花月ただいま。ごめんね、急に居なくなって」
「美咲……」
瞳を赤くさせ、今にも泣きそうな顔で花月は顔を上げる。
「どうしたの?元気ないけど……」
美咲が心配そうに近寄ると、憔悴しきった花月が縋りついた。
「白露が変なんだ」
「白露が?」
俯く花月は美咲の袖をギュッと握った。
よほど力が入っているのか、花月の手は血の気が引いて真っ白になっている。
「どうしたの、何があったの?話してみてくれる?」
花月は美咲からゆっくりと離れ、小さく頷いた。
それからポツリポツリと白露の態度がおかしい事、今まで見たこともない冷たい瞳を向けられた事、白露とした会話などを美咲達に話した。
「……どうしたのでしょうね」
「ともかくおかしいんだ。いつもと違って、何処か余所余所しい……。それに、あんな瞳を見せる奴じゃないし。……なんだか、怖かったんだ。まるでわたくしの存在なんて無いように、わたくしを見ようとしない」
今にも涙が零れ落ちそうになり、花月はそれを必死に堪えている。
「とりあず立ち話もなんですから、部屋に入って落ち着きましょう」
センリは美咲に目配せし、花月を歩くよう促した。
城内で行きかう人々は花月に会釈をするものの、花月はそれに応える事が出来ない。
重い足取りで歩く身体を美咲に支えられ、俯いていたから。
センリ達に用意された部屋に入ると、花月は崩れるようにその場に手をつき、膝をついた。
「白露の虫の居所が悪かったのではないですか?」
「そんな事ぐらいであんな顔をする奴じゃない!わたくしが今まで散々我侭を言っても、あんな冷たい表情なんて見せたことなんて……。わたくしは、知らないうちに白露にあんな顔をさせてしまう事をしたんだろうか……」
うな垂れる花月は畳に押し付けた手を握り締め、拳を強く握る。
流れる黒髪が紗幕となり、花月の表情は見えない。
すると小刻みに身体が震え、ポタポタと雫が落ち、畳に吸い込まれる。
美咲はセンリに近寄り、小声で耳打ちした。
「センリ、それとなく白露に聞いてみて?花月がこんなじゃ、放っておけない」
「……わかりました。では、花月に付いていてあげてください」
美咲はコクリと頷き、花月のもとへ行って肩を優しく擦る。
それを見たセンリは静かにその部屋を出て行き、白露を探しに行った。
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