「ユーマ、話があります」 そこには皿一杯に料理を持ったユーマが、満足そうにそれらを口に運んでいた。 「なんひゃ?」 「……まずは口の中の物を飲み込んでください」 センリは相変わらずの子供の様なユーマの行動に頭が痛くなった。 口いっぱいに頬張るユーマは素早く咀嚼し、ゴクンと一飲みした。 「何だ?」 「頼みがあります」 頼みと言う割に不遜な態度のセンリ。 笑うユーマは興味深そうに、センリに近寄った。 「美咲の護衛です。私が常に美咲の側に居ますが、何かあったら美咲を守ってもらいたいのです」 「なんだそんな事か。言われなくてもやるよ。あの女が居なくなったら、センリは死ぬんだろ?」 「……マスカーレイドはお喋りですね。あの口を縫い付けてきましょうか」 眉をしかめるセンリは美咲と楽しそうに話をしているマスカーレイドに、刺す様な視線を向ける。 ニヤニヤしているユーマを無視し、センリは用件をさっさと伝えると美咲のもとへ足を進めた。 「美咲」 「センリ、ユーマの用事は済んだの?」 「えぇ」 美咲に微笑むセンリは、マスカーレイドに冷たい視線をチラリと向ける。 「何?その何か言いたそうな、その瞳は」 「そうですね、なんだかその口を縫い付けてやりたくなりまして。針と糸がないのが残念です」 「もうバレたのか、ユーマのお喋りめ」 センリの考えている事がわかるマスカーレイドは、クッと笑い肩を震わせている。 忌々しそうに睨むセンリの刺すような視線に、動じもせず。 「セ、センリ?」 心配そうに見上げる美咲に触れるだけのキスを落とし、センリは柔らかく微笑んだ。 「何でもありませんよ。美咲、美味しい物をたくさん食べましたか?」 「うん、もうお腹一杯。色々な人とたくさんお喋りしたから、なんだか疲れちゃった」 「そうですか、では帰りましょう」 待ってましたと言わんばかりに、センリは晴れやかな顔で美咲の肩を抱いた。 しかしセンリの思惑通りにはいかず、皆にお礼をと美咲は今一度、その手を離れ人の輪の中に行ってしまった。 霞んでいく手の温もりに若干の寂しさを感じながら、センリは美咲を待った。 |