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道化の国
パーティー5



「ユーマ、話があります」


そこには皿一杯に料理を持ったユーマが、満足そうにそれらを口に運んでいた。


「なんひゃ?」

「……まずは口の中の物を飲み込んでください」


センリは相変わらずの子供の様なユーマの行動に頭が痛くなった。
口いっぱいに頬張るユーマは素早く咀嚼し、ゴクンと一飲みした。


「何だ?」

「頼みがあります」


頼みと言う割に不遜な態度のセンリ。
笑うユーマは興味深そうに、センリに近寄った。


「美咲の護衛です。私が常に美咲の側に居ますが、何かあったら美咲を守ってもらいたいのです」

「なんだそんな事か。言われなくてもやるよ。あの女が居なくなったら、センリは死ぬんだろ?」

「……マスカーレイドはお喋りですね。あの口を縫い付けてきましょうか」


眉をしかめるセンリは美咲と楽しそうに話をしているマスカーレイドに、刺す様な視線を向ける。
ニヤニヤしているユーマを無視し、センリは用件をさっさと伝えると美咲のもとへ足を進めた。


「美咲」

「センリ、ユーマの用事は済んだの?」

「えぇ」


美咲に微笑むセンリは、マスカーレイドに冷たい視線をチラリと向ける。


「何?その何か言いたそうな、その瞳は」

「そうですね、なんだかその口を縫い付けてやりたくなりまして。針と糸がないのが残念です」

「もうバレたのか、ユーマのお喋りめ」


センリの考えている事がわかるマスカーレイドは、クッと笑い肩を震わせている。
忌々しそうに睨むセンリの刺すような視線に、動じもせず。


「セ、センリ?」


心配そうに見上げる美咲に触れるだけのキスを落とし、センリは柔らかく微笑んだ。


「何でもありませんよ。美咲、美味しい物をたくさん食べましたか?」

「うん、もうお腹一杯。色々な人とたくさんお喋りしたから、なんだか疲れちゃった」

「そうですか、では帰りましょう」


待ってましたと言わんばかりに、センリは晴れやかな顔で美咲の肩を抱いた。
しかしセンリの思惑通りにはいかず、皆にお礼をと美咲は今一度、その手を離れ人の輪の中に行ってしまった。

霞んでいく手の温もりに若干の寂しさを感じながら、センリは美咲を待った。




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