「私一人でどうにか出来る事ではないので、本当に助かります」
「じゃあさ、お礼に美咲をちょっと貸し」
「それとこれとは話が別です。ましてそれ位の貸しで、美咲を差し出すには対価があまりにも違いすぎます」
マスカーレイドが言い終わらないうちに、センリは台詞を遮った。
冗談じゃないとセンリの瞳が物語っていて、マスカーレイドは口をへの字に曲げた。
「いつまでべったりなんだか。先が思いやられるねー」
「ずっと一生、絶対に離れませんから。安心してください」
「センリ!」
センリの視界に、急に飛び込んで来た美咲。
「美咲、自己紹介は終わりましたか?」
自分に飛びついてきた美咲を、センリは愛しげに髪を撫でる。
「うん、マリカのお友達は、本当に優しい人ばかりで。そうそう、あっちにユーマも来てたよ。会いに行ってくる?」
「そうですか、良かったですね。ユーマ?別に私は用事がないのですが」
微笑みながらもユーマの事は興味がなさそうに答えるセンリに、マスカーレイドは耳打ちをした。
「ユーマにも言っておけば?護衛の話。アイツにも説明しておいた方が良いと思うけど。じゃないと勝手に色々な解釈をしてやらかすんじゃない?」
センリは天を仰ぎ、すぐに顔を俯いた。小さく息を吐き、頷いた。
「美咲、私はユーマの所に行って来ますね。美咲はここに居てください」
「うん。マスカーレイド、あっちに美味しそうなのがあったんだけど、あれは何?」
物珍しい物が並べられているせいか、いつも以上のはしゃぎっぷりを見せる美咲にセンリはまた、ため息をつく。
「天真爛漫と言うか、自然体と言うか……。何だかやり切れないですね」
生まれたての子供のように何にでも反応を示し、色々な事に興味を持ち始める美咲に、少々心寂しく思うセンリでした。