「一々見せ付けなくても、俺の前では散々やってる事なんだから」 マスカーレイドは口角を上げ、センリを意味ありげな横目で見た。 邪な念を跳ね返すように、センリも視線を向ける。 「貴方だけでは、ないのですけどね」 「はいはい、わかってるって。美咲、皆に自己紹介したら?ほら、皆君の事待ってるよ」 マスカーレイドの指の先には、先ほど美咲を囲んでいた人達で。 センリが美咲の側に来た事で、遠巻きに見ることしか出来ないでいた。 「あ、そうだね。……でも、なんて自己紹介したら……」 「別に何でも良いさ。ほら、行った行った」 背中を押され、美咲は人の輪の中にポンッと入って行った。 ざわめく人の声が、美咲の頭上で飛び交う。 「み、皆さん、マリカのお友達なんですよね。私は……センリの希望の光で、美咲と言います。よ……よろしく」 たどたどしく自己紹介する美咲を見て、マスカーレイドは吹き出してしまう。 「美咲、良い子だな。ちゃんと私はセンリのモノって言ってる」 急に美咲を追いやられたセンリは面白くなさそうにしていて、クスクス笑うマスカーレイドを睨んでいる。 「勝手な事しないでもらいたいですね」 「いいじゃん。美咲を守ってくれる人を増やすなら、こうした方が手っ取り早いって。だから、マリカが今回のパーティーを考えたんだぜ?」 「……知っていたんですか」 腕組をしながら、マスカーレイドは得意そうに口の端を上げた。 「まぁね。マリカと話しててな、センリなら完璧を求めるだろうからって。美咲の護衛を増やすなら、これが一番だって事になってね」 「余計な事を……と言いたい所ですが、恩に着ます。ありがとうございます」 マスカーレイドから美咲に視線を移せば、大勢の人に囲まれワタワタとしながらも笑顔で居る美咲に思わず笑みが零れる。 「ここに居る人は、きっと美咲に魅かれますね」 「だろうな。そして、信用出来るマリカの騎士達だから、これで守りは完璧になる」 くったくなく笑う美咲から光が零れるように、センリとマスカーレイドは辺りが暖かく感じられた。 |