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独り、二人
二人の生活2

 翠ちゃんと同じ部屋で寝起きするようになって、一週間。
 分かった事が何個か。

 まず一つ目。


「翠ちゃーん、おはよー」


 コンコンと部屋の扉をノックする。
 まぁ、こんなくらいで翠ちゃん起きないけど一応ね。

 で、案の定うんともすんとも言わない翠ちゃんを起こしに、部屋に侵入。
 ユサユサと揺さぶって起こす。


「おはよー」

「・・・おはよ」


 嫌そうながらも目を開けて、挨拶を返す翠ちゃん。
 因みに現在の時間は、11時。

 1.翠ちゃんは、放って置くとどれだけでも寝ている

 あ、因みに寝顔も寝起きもメチャメチャかわいーんだよー。
 役得だよねー。


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 で、二つ目ね。


「翠ちゃーん、はい座ってー」


 顔を洗ってきた翠ちゃんは、いつもの無表情。
 でもーそんな顔でもかわいーって思うおれ、チョー末期。

「ん」

「はい、いただきまーす」

「いただきます」


 翠ちゃんの返事って、基本的に「ん」って頷くだけなんだけど、それがもーかわいーんだよー!!
 あとねー「いただきます」って手を合わせるのもチョーかわいーの!

 でも何より、翠ちゃんがおれの前で、おれの作ったもの食べてくれるのが嬉しいんだー。もーホント幸せ。

2.翠ちゃんの仕草は全部かわいい


「な・・なんだ?」

「んー?こうやってー翠ちゃん見てるとー幸せだなーって」

「・・・恥ずかしいことを言うな」

「んっふっふー。ね、おいしー?」

「・・・・ん」


 翠ちゃん、まぢツンデレ。真っ赤な顔もかわいい。


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 食後、おれが洗い物を終えてリビングへ戻ると、翠ちゃんはソファに座ってた。
 お馴染みの『体育座り』で。んーてか、翠ちゃんだと『おやま座り』って感じ?

 その格好で何か読んでるんだけど、なんだと思う?
 正解はー


「翠ちゃーん、そんなの読んで面白いー?」

「んー別に・・・」


 でも、ペラペラと捲ってるんだ。教科書を。
 今日は、科学みたい。昨日は古文だったなー。

 面白くないらしい教科書をソファの上でずっとペラペラ捲ってる。
 面白くないって言いながらも、殆んど毎日。


 それでたまぁに、ぼーっと宙を見つめてる。
 気付いた事。
 これが一番重要。

 3.どうやら、自分の事すらどうでもいいらしい

 何となくねーそんな気はしてたんだけど、同室の顔合わせをした翌日に確信したと言うか、事実を知ったんだよ。

 翠ちゃんってば、全然起きてこなくて、春休みだからかなーなんて思ったんだけど、17時過ぎても起きてこなかった。
 さすがにと思って部屋に入ったら(あ、ノックはしたよ。返事なかったけど)、翠ちゃんベッドに座ってぼぉーってしてた。


「翠ちゃん?」

「春・・川?」


 声を掛けたら、おれを見て名を呼んだ。
 良かった。トんじゃってたらどうしよーって思ってたから。


「うん、どうしたの?」

「・・・グルグルする」

「へ?」

「なんか、グルグルして立てない」

「・・・翠ちゃん。そう言えば、昨日の夜御飯食べた?」

「んー・・・?」


 首を傾げる翠ちゃん。かわいーけど、だめ!
 そのまま、倒れて行きそうになる。
 慌てて支える。


「・・・お昼は?」

「・・・んー」

「朝は?」

「野菜ジュース」

「・・・」


 どうやら、丸一日何も食べていないみたい・・・。


 もう、慌てて着替えさせて食堂に連れて行ったよ。
 だって、冷蔵庫は空だもん。

 翠ちゃんは立てないから、お姫さま抱っこで。
 意外にも嫌がってなかった。キャーギャー言ってる周りには顔を顰めてたけど。

 適当な席に座らせて、注文した。
 翠ちゃんには有無を言わせず、卵雑炊を頼んで、食べさせた。
 勿論、あーんだ。

 これは流石に嫌がってたけど、抵抗する力もないので結局大人しく食べさせられてくれた。

 ゆっくりゆっくり食べさせてたら、途中で翠ちゃんの去年までの同室者とその友人達がきた。


「あ、坂倉。よかった。ちゃんと飯、食ってるな」

「スゥちゃんもチカ君と一緒で、一人だとご飯食べないから。ボクとルー君さっき寮に戻ってきたけど・・・スゥちゃん、昨日はちゃんと食べた?」

「・・・」

「だめだよ。ちゃんと食べないと!チカ君も昨日今日と食べてないっていうからもしかしてと思ったけど・・・もう!」


 ぷりぷりと怒っている小柄な男の子。


「春川が坂倉の同室か?」


 その子よりは大きめの男子がおれに声をかけて来る。あ、宮部君だ。ちっさいのは栗原君だよね。


「うん。そーだよー」

「坂倉は・・・」


 声を潜めて、話す宮部君。
 こんくらいの声なら、栗原君に説教されてる二人には聞こえないよね。


「自分に無頓着だ。見てるこっちが痛いくらい。だから・・・」

「んー大丈夫。翠ちゃんの面倒はおれが見るよー。おれこれでも、面倒見いい方なんだからー」

「これからも迎えに行こうかと思っていたけど・・・」

「おれに任せといてー。てか、おれと翠ちゃんの時間を邪魔しないデー。新婚さんバリにラブラブイチャイチャするつもりなんだからー」

「・・・アア」


 あれ、なんか・・・まいっか。

 そんなわけで、翠ちゃんの友人連から公認。


 ラブイチャ目指して、今日も餌付けに励んでまーす。

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あきゅろす。
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