独り、二人
出逢った二人
実家で一泊して、学園に帰った。
高等部の寮は、中等部の頃より広い。持ち物が殆んどない僕の部屋は、何処か淋しく感じられる。
同室者には、まだ会っていない。
多分実家に帰っているのだろう。
初対面は新学期に持ち越しになるかも知れないなぁ・・・なんて、どうでもいいことを考えつつ、ソファにぼぉーっと座っている。
何かしたい気分でもないし、このまま寝てしまおうか。
なんて考えていた時だった。
「お邪魔しまーすつか、ただいま?」
騒がしく男が入って来たのは。
「あ、翠ちゃんだ。ホントに同室、翠ちゃんなんだぁ」
・・・だれだ?
僕の顔を見るなり、男がはしゃぎだした。
「翠ちゃん、眠たいの?なぁんか、眠そう」
「だれ?」
「ん?おれ?おれのこと、知らない?」
「知らない」
知らないよ。
なんか整った顔してるから、例のランキングに入ってるのかも知れないけど、僕はそんなの興味ないから知らない。
「そっかぁー知らないんだぁ。えっとねぇ、おれはねぇ」
なんで、知らないって言ったのに嬉しそうなんだろう?
ま、いいか。
「春川遠海って言うんだぁ」
「ふーん・・・」
やっぱり聞いた事もないと思う。
でも、去年までも同じクラスだったんだろうか?
「おんなじクラスだったよぉ?」
でも、おれほとんどサボってたけどねェ。なんて笑って言う男。
ふぅん。ま、どうでもいいや。
部屋に戻ろうかな。
「あれ?翠ちゃん部屋行くの?もっと、お喋りしない?」
「・・・部屋戻る」
「ぶぅー・・・あ、じゃあ一つだけ言いたいことあるんだぁ」
なに?
とりあえず、止まって振り返って見た。
「っ!」
思った以上に近くに顔があって驚いた。
「あのねぇ、おれ、翠ちゃんのこと好きだからね」
さっきからずっと浮かべているへらへら笑う顔じゃなくて、真剣な表情で男は言うと、僕の口に口をひっつけた。
所謂、キスというやつだ。
・・・口を押さえて、部屋に逃げ込んだ。
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