独り、二人
繋がらない家族
案の定だった。
「どういうことなの!3位ですって?!いつも2位だったじゃないの!今回こそは、井上の子に勝って、1位になってくるかと思えば、3位!」
卒業式が終わって、春休み。
帰る気なんか、無かったけど、帰って来いって五月蠅かったから帰ってきたら、案の定。
五月蠅い。
「しかも、こんな無名な子に!外部の庶民でしょ?!もう、信じられないわ!」
ヒステリックに喚く、女。
あぁ、五月蠅い。
「母様、母様、どうしたの?」
大きな扉の隙間から、顔を覗かせる小さな女の子。
「あら、優子ちゃん帰って来たの?」
突然に猫なで声になる、女。
「うん。お兄様も一緒よ」
「ただいま、母さん」
「おかえりなさい。秀さん」
小さな少女の後ろには、少年がいる。
僕の、父親違いの弟妹。
「あれ?翠兄さん、帰ってきてたんだ?」
「あぁ」
その横を、通り過ぎる。
あぁ、なんて滑稽な・・・
「待ちなさい!話は終わっていないわよ!」
「秀と優子が帰ってきたんだから、もう僕はいいでしょ」
それだけ言って、自室に戻った。
この広い屋敷の何処にも、僕の部屋などない。
僕の部屋は、屋敷の離れ。
陽の当らないその部屋は、僕そのもののようで、笑える。
「あぁ、早く戻りたいな」
僕が捨てられた、あの学園に。
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