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独り、二人
似た者同志の二人

もう、誰も信じたりしない。

みんな、いつか絶対に僕を置いていくのだから。



変わり映えせぬ日常。
ただ生きているだけの毎日。


飽きという感情さえもどこかに置き去りになったのかもしれない。


それで、もう良かった。

何でも良かった。
どうでも良かった。


だから誰も彼も放っておいてくれ・・・





「あ・・・」


見上げた掲示板の一番上には名前がなかった。
3番目だった。


「誰・・・ま、いいか」


一人、小さく呟いて彼ー坂倉翠ーはその場を去って行った。


翠にはどうでもいいことだったが、あの人にとっては違う。

どこからかあの人に伝わって後日面倒なことになりそうだ。と考えつつ部屋へ戻る。


同室者はまだだった。

何をするでもなくソファに座った。



ボォーッとしていたら、いつの間にか時間が経っていたらしい。


「坂倉、大丈夫か?」


同室者が顔を覗き込んでいた。


「・・・あ?井上、戻ってきたんだ」

「うん、今だけど」

「また理事長?」

「そう」

「・・・一番じゃなかったな」

「そうだった?ボク見てないから」


井上は自分と何処か似ている。翠はそう思っている。

ただ、どうしても結果を見に行ってしまう翠と決して見に行こうとはしない井上。

違いはそれくらいだろう。


「一番は編入生らしいよ」


卒業を二週間後に控えたこの時期のテストは、進学する高等部でのクラス分けを左右する。

その為、外部受験者も順位に反映されているのだ。

「へぇ・・・外部から来るんだ」

「今年はその人含めて五人だって」

「詳しいな・・・興味あったんだ?」

「ないけど、理事長に案内役を頼まれた」


如何にも興味なさそうに言う井上。


「ま、頑張れ」

「他人事だな」

「他人事だろ」

「まぁ、そうだけど」

「・・・来年からは同室じゃないのか」

「そう」


二人はソファの上で背中合わせに膝を抱えている。

いつからか、それが二人の会話する時のスタイルになっていた。



「まあどうにかなるか」

「坂倉、人見知り大丈夫か?」

「井上こそ大丈夫か?」

「「まあどうでもいいか」」



似た者同志の二人は呟いた。






僕は、僕らは知らなかった。
すぐに転機やってくることを・・・―――


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