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静かな会話と、カクテルを楽しみ、お互いの「お薦め」の店を教え合ったりした。
結構、ウマが合ったのか、時間が早く流れてしまった。
お互いに、終電を思い出し、急いで駅に向かったのだが、途中で、
『キャッ!』
急に、彼女が俺の腕に掴まった。
良く見ると、ヒールがマンホールの蓋の穴に捕らえられてしまっている。
腕を貸しながら靴を抜く手伝いをしていると、
『大丈夫、それに終電が出ちゃから、お先にどうぞ。』
そう言われても、見捨てる訳にいかないし・・・
マンホールとの格闘が終わったその時、終電が走り去るのが見えた。
『有難う、ごめんなさいね。』
所在なさ気に、駅に二人で向かった。
タクシー乗り場には、短い行列が出来ていたが、『タクシーにしませんか?』
っと、彼女に手を引かれ誘われるままに向かった。
ポツポツとした会話から、俺の家の途中に彼女の家が有るのが判り、(実は、歩いて15分位だと判明)情け無いけれど、手持ちが無いので、相乗りを申し出ると、すんなりと快諾してくれ一安心。
やがて、タクシーに乗り込み、うつらうつらしていると彼女の家の前に到着。
二人でタクシーを降り、財布からなけなしの五千円札を彼女に差し出した。
『あら、お釣り用の細かいのが無いは、ウチには有るから、ちょっと寄って下さる?』
『あっ、お釣りは結構ですって言いたい所だけど・・・なんか、格好悪いですね』
ポリポリと頭を掻く。
にっこり微笑んで、
『いいえ〜っ、大切な事よ、きちんとしなきゃ!』
彼女に着いて、マンションに入った。
最上階でエレベーターを降り、彼女の部屋の前で待つつもりだったが、廊下で待たれるのも、なんだからっと言う彼女に従い、玄関の中に入った。
玄関に入ると、きちんと整理された室内が見渡せたが、ジロジロ覗き込まない様に注意していた。
『上がって、待ってて下さる?』
との誘いは、遠慮させて頂いた。
『あっ、お気遣い無く。』
『それじゃあ、ちょっと待ってて下さいね』
そう言い残し、奥の部屋に消えた。
戻って来た彼女が、ポチ袋入りのお金を差し出し、受け取って帰ろうとすると、
『ねえっ、もう一つお願い、お風呂の蛍光灯を取り替えてくれると助かるんだけど、駄目かしら?』
よっぽど、「草食系」に見えるのか、余りにも無防備なお願いに、躊躇いを感じたのだが、「私のお願いは断れ無いのよ」っと言う様に、新品の蛍光灯と工具を俺に差し出した。
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