Fabrication 〜偽りのココロ〜 †家族を考える† 翌日。 「おはよう、リョウ、イヴ」 ユウはリビングで二人に挨拶をかわした。 「おはよユウ姉」 「おはようございます、マスター」 ユウはイスに座り、食事を摂る。いつもと変わらない、はずの朝。 「ごちそうさま」 早々と食事を終えたユウはまた自室へ戻った。 「はえ〜な、ユウ姉」 「……リョウ」 「……イヴ?」 突然呼び捨てで呼ばれたリョウは無意識のうちにイヴに尋ねた。 「はい、どうかしましたか?」 「いや、どうして俺の名前を……」 機械なのにミスをするのか、と思いながら本題を言った。 「マスターがそう呼んでいたので、呼んでみました」 イヴはその問いに、まるで親の真似事をした子どものような返事をした。それがおかしくて、リョウは少し笑った。 「おかしいですか……?」 イヴは笑うリョウに対して首をかしげながら訊いた。 「いや、全然。家族ってそんなモノだよな」 今の主従関係よりはマシだと、口には出さずに心の中に留めておいた。きっと、それが昨日の彼女が出した結論なのだろう。 「よかった……ごちそうさま、イヴ」 多分イヴは、何がよかったか全くわからなかったと思った。 ――それがわかる時は、彼女は本当の成長を遂げる。 機械ではなく、人として。 [前へ] |