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Fabrication 〜偽りのココロ〜
リョウ@
ユウが部屋を出た後、
「なんだかな〜」
とリョウが呟いた。
「リョウ様、どうかしましたか?」
「ん……いや、何でもないよ」
慌ててリョウが言い繕いながら紅茶を飲んだが、彼の考えていた事はイブにもわかっていた。
「リョウ様、最近……マスターに避けられているような気がするんです」
そう言うと、リョウは噴き出した。もちろん、紅茶ごと。
「あっ……」
「わっ、ゴメン!」
「いえ、大丈夫です。驚かれたようですね」
「まぁ、いきなりだから……それで、避けられてるって?」
リョウから本題を振った。
「えぇ、最近マスターが私に話しかけてくる回数や一緒にいる時間が明らかに減っているんです。何か私、悪い事でもしたのでしょうか……?」
「それは……」
『燃料食わせようとしたりクラシックを大音量でかけたり研究員をその料理や音楽で何人も病院送りにしてたら、普通誰でもキレるだろ……』
とリョウは口が裂けても言えなかった。
『この娘アンドロイドだけど繊細だからなぁ……』
心を持った機械。それの扱いが大変難しい事は、この一年で嫌でもわかった事だ。
『この娘は、自分が機械だって事を一番気にしている、だから……』
「……気にしなくていいよ、大丈夫だから」
リョウはそう言って、笑顔を作った。それでイブも納得したようだった。
「んじゃ、俺もそろそろ戻るよ。イブ、おやすみ」
「おやすみなさいませ、リョウ様」
そのやりとりの後、リョウも自室に戻った。
「ふぅ……」
リョウは、ユウがイブに対して嫉妬に近い感情を持っている事を知っていた。ただ、ユウのプライドの高さ、自分が作ったイブに対して愛しいと感じる部分がその感情を抑えている事も。
確かに、イブが生まれてから何人もの人が魅了され、ユウが持っている、人にはない魅力をもってしても敵わなくなっていた。ユウも人である以上、負の感情を持っている。しかし、イブには今のところマイナスイメージの感情を全く持っていない。それが、イブの魅力だった。
「純粋過ぎるからな、イブは……」
壊れないように、守ってあげたい。
リョウがイブに対して持つ感情は、ユウ同様の家族としての親愛だった。出来れば、イブには純粋なままでいてほしい。しかし、このままでは唯一の家族である姉、ユウを追い込んでしまう。
「マジで、どうすればいいんだ……」
考えれば考えるほど、リョウは泥沼にはまるように苦しんでいった。

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