[携帯モード] [URL送信]

倉庫
どちらかが死んだ場合(エアギア:左スピ)

痛い。
目を開けると視界は真っ赤だった。
体を見回す。こんな傷でよく生きていられたものだなぁ。
割れそうな頭でうっすらとそう思った。
生きて・・・そうだ、左君は?
ゆっくりと体を動かす。
想像以上の痛みに意識が飛びそうになる。
けれど、その痛みは生きている証だ。

彼は・・・どうなったのだろう。

「っ!」

体がぐらりと傾く。
支えようと出した腕は肘から先がなかった。
それでも命があるなら、こんな代償など安いものだ。
左君は・・・。

「!」

がたん、という音がして僕は振り向いた。
そこには、よく見慣れた僕の大切な人が横たわっていた。

「   」

・・・声が出ない。
仕方がないから、這うようにして彼の下へ動いた。
彼は、大丈夫だろうか。
さっきからぴくりとも動かない。
気を失っているだけだと自分に言い聞かせる。
もしそうでなかったら、僕は・・・。

左君の傍まできて、僕は愕然とした。
いつもと同じ、端整な顔。
その右目のあった場所に、穴が空いていた。

助からない。

そんなこと見れば分かるけれど、僕は信じたくなかった。
左君、ねぇ左君、死なないでよ。
声がでないことをこんなに恨んだことはない。
涙が溢れてくる。
巻き込んだのは僕の方なのに、彼だけがこんなことになってしまうなんて。
歪んだ視界の中で、左君が少し笑った気がした。

「生きろ」

彼も声が出ないのだろう。それでも言いたいことはしっかりと伝わった。

生きろ。

それは今の僕にとって何より重い言葉だった。
ごめん、僕が巻き込んでしまったのに。
君にはまだ未来がたくさんあるのに。
なんて無力な炎。
彼はまた少し笑った。

「愛しています。」

それは僕の台詞だった。
ごめんなさい。
君には最期まで迷惑をかけて。
それでもいつも一緒に居てくれた君のことが、僕は何より大切だった。

ありがとう。
愛してるよ。
声は出ないけど、左君には伝わったはずだ。
彼は最期に満足そうに笑って、そして・・・もう動かなくなった。


・・・動かな、く?
もうあの優しい顔も、聞けば安心する声も、なくなってしまうのだろうか。

・・・嘘、だ。
こんなことになってしまうなんて。
自分が死ねば良かったのに。
僕はもうやるべきことはやったつもりだった。
覚悟もしていた。
それなのに。
僕は、甘かったのだ。
他人の命が犠牲になってしまうなんて、こんなに優しい人が居なくなってしまうなんて、考えもしなかった。
これは、神様が与えた罰なのかもしれない。
死んだ方がいくらかましだっただろう。
僕なんて居なければよかったのに。
左君を殺したのは、僕だ。
僕のエゴがこんな結果を招いてしまった。
最初に彼が助けに来た時、殴ってでも追い返せば良かったのだ。
それをしなかったのは、一緒に居て欲しかったから。
自分の我儘は、自分の大切な人を殺してしまった。
自身のあまりの醜さに吐き気すらする。
体に感じる激痛など、気にもならなくなった。
今すぐ自分の首を掻き切ってしまいたいが、そんな力はもう残っていない。
第一、そんなことをしてしまえば左君は、ああ、優しいあの人は僕を許しはしないだろう。
僕は溢れる涙を拭いもせず呆然と立ち尽くした。
急に沸き上がってくる悲しみと自己嫌悪に、僕は叫ぶ。
声なんて出ないけれど、意味なんてないけれど、僕は叫び続けた。





マガジンで以下略




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!