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どっちも死んだとしたら(エアギア:左スピ)

(・・・ここまで、か。)

まず最初に浮かび上がったのは、諦め。
体中何も感じない。
自分の熱が急速に奪われていくのが分かる。
一瞬で死ねなかったのは運が良かったのだろうか、悪かったのだろうか。
最終的に死ぬのだとしたら、結局はどちらも一緒だ。
そんなことを考えられるくらいに、意識ははっきりとしていた。

(何とかなると、思ったんですけどね・・・。)

自分の甘さには苦笑するしかない。
あれほどの力を持った人間がいるなど、考えたこともなかった。
スピットファイアと戦った時でさえ、こんな敗北感を感じたことはなかったというのに。
自分が井の中の蛙だと思い知らされた気分だった。

(・・・畜生。)

自分一人の力では何も変えられない。
たった一人の人間の命すら守ることができない。

(・・・畜生!)

自分と奴らの何が違うというのだ。
何故今自分の人生が急に終わらなくてはならない?
・・・答えは見つからなかった。
そうしている間にも、自分の人生が終わる時は刻一刻と近づいている。
彼は・・・スピットファイアは今何を感じているだろう。

「左、君?」

視線に気付いた彼がこちらを向いた。
彼も一撃では死ねなかったようで、顔の半分を深紅に染めながら私の名前を呼んだ。
助からない。
お互いそんなことは分かっていた。

「・・・ごめ、ん。」

彼の口からこぼれたのは謝罪の言葉だった。

「君に、はまだ未来、があった、は、はずなのに、僕はそ、れを踏み躙ってしまった。」

切れ切れの口調。
残された時間は少なく、今聞きたい言葉はそんなものではない。

「いい、加減に、して下さ、い。」

舌が張りついて声が出ない。
彼の口調のことなど言えたものではないと苦笑する。

「私、はあなたを、守りた、かった。」

そう。
理由は単純。
あなたが傷つくところなど、見たくなかったのだ。

「これ、は、私の力不足、から起こった、ことです。だから、あなたが気に、病むことは何も、ない。」

その言葉は真実だ。
それに、あの責任感の強い彼のことだ。
こうでも言わないと彼はずっとそのことを後悔し続けるだろう。

「あり、がと。」

彼は酷く綺麗な笑顔でそう言った。
自分が今まで見た中で、一番の笑顔だったと思う。
やはり彼は、笑った顔が一番似合っていた。
・・・例えそれが、死ぬ間際の顔だとしても。

「不思議、だね。左、君と一緒、なら、死ぬ、のも、怖く、ないって思えるん、だ。」

彼が呟いたのが、妙に耳に残った。

「それ、は光栄、ですね。」
無理に唇の端を釣り上げる。

「あなた、と共に、いられ、るなら、死、ぬの、も悪く、ない。」
精一杯の強がり。
それににっこりと微笑んだまま、彼は命の炎を消してしまった。
私もそれを見た後、彼の後を追い掛ける為に意識を手放した。


最期にあなたと居られて、本当に良かった。


マガジンで以下略



あきゅろす。
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