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絶対服従のまほう
1


キスをした。たぶんそれは栗原も望んでるものだったと思う。だってあんなにハァハァ悦んでたし。

舌を入れたのがマズかったのか
上顎を舐めたのがマズかったのか

どっちにしろその後の栗原のソワソワして落ち着かない態度が気に入らない。なんで無駄に距離置こうとかしてんだし。
ちょっとしたことで染まる頬は悪くない。だけどソワソワたじたじした態度に俺まで落ち着つかなくなる。

ってかムカつく
そんな自分にムカつく

「早く選びなって。アイスなんてどれ食べたって一緒だっつの」
「ちょっ!コレにする。あっ、やっぱコレ?」
「いや。俺に聞くなし」

この優柔不断が

放課後コンビニ寄ってアイス食いたいっつーから付き合ってるけど俺甘いもん食べないし。 食いたいなら早く買えよ。
アイスの並べられた冷凍庫を前に思案する癖っ毛の持ち主。溶けるから透明なガラスを締めてやって、気長に待ってやる。

「うぁ〜しぼったけど2択んなった」
「わかった。俺こっち食うから栗原コレ食べなさい」

残念
俺って気短いんだっけ

「マジか。ありがとう、どっちも食べれるってサイコー」
「はいはい」

結局金出すのは俺だけど。ってかこんな関係なる前から栗原に出させたことないかも。

「んー。林はこっちのカップね。オレはチョコ」
「ん。どーも」
「いえいえ、こちらこそごちそう様です」

コンビニ出た駐車場でぺこり頭下げる栗原に一瞬。ほんと一瞬だけどムラッときた。
白いうなじに薄い汗が光る。それを舐めて味わえたら夏の暑さもふっ飛ぶかも知れない。

俺ってイライラがムラムラに直結するらしい
ほんと残念だね、栗原

「栗原ってチョコ好きだよね」
「ん〜そだっけ」
「こっちいる?」
「いる」

栗原が即座に頷く。食い意地はったやつめ。

かわいいじゃないか

大通り横の歩道歩きながら何の気もなくカップのアイスを差し出した。したのに栗原はちょっと迷ってからそれを受け取る。
逡巡したその態度がイラッとくる。

「ちょっとオレのアイス持ってて」
「今」
「は?」
「今なんで受け取んの迷ってたわけ?」

途端、白っぽい頬が桃色に色づいた。チークなんてしてないのに天然で艶を生み出すから油断できない。

「え…だって、なんか…ね」
「だってなに?」
「間接ちゅーだなぁ…とか思ってみたり…」

……お前どこの生娘?

呆れた。そして脱力。
俺の気持ちが伝わったのか栗原から受け取ったチョコアイスも溶けだした。



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