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不器用な宍戸と優し過ぎる鳳(2015鳳誕)

2月14日
ある日の氷帝、そこはいつもと同じようでいつもと少し違った。

「鳳君!誕生日おめでとう!これあげるね!」
「鳳先輩、良かったら貰ってくださいっ!!」
「鳳ー今日誕生日だろ?これやるよ!」

今日は鳳長太郎の誕生日であり一年に一度のバレンタインデー。
女子生徒だけでなく男子生徒までが鳳にチョコやプレゼントその他もろもろを鳳に渡すべく
テニスコートに集結していた。

「みんなありがとう!でもここじゃ練習の邪魔になるから別のところに行こう?」
そう言っている鳳の顔も満更ではなさそうだ。
そしてこれを複雑な気持ちで見ている男が一人…

「…うぜぇ」

そう、宍戸亮。鳳長太郎の立派な恋人であった。
宍戸は、鳳の誕生日が今日であることを知らなかった。もちろんバレンタインとしてのチョコレートは
用意したものの当日になって誕生日が今日であることを知り、そしてそれによって
多数の生徒に囲まれ嬉しそうにしている鳳を見てしまっては、苛々するのも当然だった。

「なんや宍戸、ずいぶん荒れとるなぁ」
「…忍足、邪魔。俺今テニスする気無ぇから」
「そんなもん見たらわかるわ、ほら、愛しの鳳が帰ってきたで」

ふっと入り口に目をやると両手に色とりどりのプレゼントを抱えた鳳がこっちに走ってきているのがわかる。
しかしそれも今の宍戸には苛立ちの材料にしかならなかった。

「宍戸さん!すみません遅くなって!荷物置いてくるんで打ち合いしましょうよ!」
「…悪い、俺体調悪いから帰るわ」

そう言うと宍戸は近くにあった自分の荷物を取って走っていってしまった。

「え?ちょ、宍戸さん!!」
鳳の呼びかけにも反応しない。
「どうしよう…俺、宍戸さんになんか悪いことしちゃったかなぁ…」
「鳳、考える前に宍戸追いかけないとあかんのちゃう?」
「!!!し、宍戸さん!!」

そう言って鳳も宍戸を追いかけるべく走っていった。
「…ほんま、世話の焼けるバカップルやな…」



「はあっ…」
宍戸が走ってたどり着いたのは小さな公園、よく幼馴染達と遊んだ所だ。

「なんで俺逃げちまったんだろ…」

言いたいことはたくさんあった。まず何で誕生日を教えてくれなかったんだって。
その後これから今日一日は一緒にいるって約束させてそれでおめでとうって言って
バレンタインのチョコ渡して今度プレゼント一緒に買いにいこうなって約束して
それで、それで…

「もう、俺って激ダサ…マジ馬鹿みてぇ…っ」

全部俺が悪いのに。長太郎はなんも悪くないのに。なのに俺が勝手にイラついて
勝手に八つ当たりして…長太郎を悲しませた、心配させた。
ヤバい、涙でそう………

「宍戸さん!!!」
「!ちょ、たろ…?」

宍戸が顔を上げるとそこには息を切らした鳳がいた。
「宍戸さんっ…ごめんなさい!今日一日宍戸さんを、ほったらかしちゃってっ。
俺、誕生日プレゼントなんていらないですから!だから宍戸さんと一緒にいさせてください!!」
「長太郎…」
「宍戸さん…俺から逃げないでください…」

鳳はそういって宍戸を抱きしめた。鳳の心音がダイレクトに宍戸に伝わる。
その鼓動が早いのは、きっと走ったせいだけではないだろう。

「鳳、俺ん家来るか?」
「…はい。帰りにケーキ買って行って一緒に食べましょう?」
「…おう」

不器用な宍戸と優し過ぎる鳳。その歯車は噛み合わないこともあるけれど。
でもきっと、今の二人にそんなことは関係ないのだろう―――



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