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遊園地に行こう(岳日、鳳宍)

「宍戸!明日暇?」

いつものように厳しい部活動を終え、部室で着替えていると
向日岳人がそんなことを口にした。

「明日?…まあ別に用事はねぇけど」
「マジ!?じゃあさ、遊園地行かね?」

…いきなりすぎではないだろうか。いくら幼馴染だからって
遊園地に行くことを前日に伝えるのはどうかと思う。しかし、
休日だからといって宍戸のスケジュール帳は決して赤く染まってはいない。
つまりは暇なのだ。

「…なんでいきなり遊園地なんだよ」
「無料券もらったからさ、使わねぇと勿体無いじゃん!」
「だからってなんで俺を誘うんだよ。お前愛しの日吉はどうした」

そう、岳人にはほかならぬ日吉若という生意気でかわいい恋人がいる。
岳人はその生意気さに文句をたれつつなんだかんだ日吉を溺愛している。
日吉もまた岳人に悪態をつきながらも結局のところ岳人にベタ惚れなのである。

「もう誘った。行くってさ」
「じゃあ二人で行ってくればいいじゃねぇか」
「ばーか、俺だってそうしてぇよ。でも券四枚あるから残り二枚は
お前ら宍戸と鳳に捧げてやろうって言ってるんだよ」
「え、長太郎も行くって言ったのかよ!?」
「おう、但し『宍戸さんも行くなら』っていう条件付だけどな」

これはもう行くという選択肢以外は残されていないのだろうか。
宍戸の本心として、決して遊園地に行きたくないわけではない。むしろ
今まであまり行った事がないので少し興味があるくらいだ。
だが宍戸が躊躇っているのはほかでもない恋人の鳳に関してだった。

今まで二人は数えられるくらいにしか二人で出かけたことはない。
気まずい訳ではなくむしろ気兼ねなく付き合える良い関係を築いている。しかしそれ故に
不意に鳳が見せる男の顔、熱の篭った視線に宍戸はどうしても慣れないのだ。
宍戸はとにかく照れやんわりと拒否する。なので鳳は少し困ったような顔を見せて
「すみません」と謝る。宍戸はそれが堪らなく嫌だった。しかし、

「分かった、行く。俺も遊園地行くよ」

そのままでは何も変わらない。自分が変わらなければいつまでも鳳にあの顔をさせてしまう。
宍戸も鳳のことが大好きなのだ。本人には絶対に言えないけど。

(頑張れ!俺!)
宍戸はそう自分に言い聞かせた。

「じゃ決まりで。明日朝7時に噴水の前な。早く行っていっぱい遊ぶぞー!」
「おう、分かった。じゃあよろしくな」

少しだけ、明日が楽しみだ。

ー翌日ー

「おはよう、日吉」
「ああ」

先に着いたのは鳳と日吉。時間に敏感な二人だった。時間は6時50分。
「宍戸さんは後15分位でくると思うよ」
「向日さんは20分位だな、どうせ今日も遅れてくる」
と、会話を交わした。
二人は別に仲が悪いわけではないが特に話すこともない。
沈黙が流れる。すると、

「悪い!待たせたな。遅くなってごめん!」

向こう側から向日と宍戸が並んで歩いてくる。どうやら一緒に来たようだ。
「向日さん、早かったですね」
「ああ、宍戸に迎えに来てもらったからな。だからちゃんと早起きした!」
「それよりお前ら二人、遠目で見たら凄いぞ!どっかのモデルみたいにキラッキラだった!
周りのやつらみんなお前らのこと見てたぞ!!」

というか、四人で並んだその姿はまるでどこかのアイドルグループのようだった。
サラサラのブロンドヘアーに切れ長の目をしたクールで真面目そうな日吉。
綺麗な白い短髪に優しげな目元と弧を描いた口元の美しい鳳。
中世的な顔を持ちぴょこぴょこと飛び跳ね弾けるような笑顔を見せる向日。
一見クールそうだが少年のような表情と態度を表した好青年の宍戸。
街行く人々が振り返らないはずがなかった。しかしそんなことは四人にとってはどうでも良い。

「早く行こうぜ!」

ちょっと長いので二つに分けます…

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