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夏の暑さのせいです(赤丸)

「なあなあジャッカル、壁ドンってなんだ?」

とある日の放課後、ここ立海では、いつものように練習が行われていた。
「は?壁ドン?俺が知るかよ」
そう話しているのは、ダブルスの丸井ブン太とジャッカル桑原。
日々過酷な練習をこなしている彼ら、そんな中での短い休憩なのだから好きなことを話しても
良いとは思うが、とくに色恋沙汰には副部長が厳しいので仲裁のため柳生が話に加わる。

「二人とも、何を話しているのですか?」
「なになに?名に話してるんすかぁ?」
「どうしたんじゃ騒いで」
 
柳生をきっかけに次々とレギュラー人が加わる。

「あのさ、壁ドンって知ってるか?」
ブン太がみんなに問う。
「壁ドン…ですか、」
「壁ドンってあれじゃろ。マンションで騒いどると隣人に壁叩かれるやつ。」
「違う!いやそれもそうだけど!」
「じゃあなんなんすか?」
「いや、それが分からねぇから聞いてるんだよ。」

本来ならばとっくに休憩時間を過ぎている。止めに入ったはずの柳生も、いつの間にか話に
飲み込まれている。このままでは真田に見つかり、裏拳を食らいかねない。

すると、遠くで備品の確認をしていたはずの幸村と柳がやってきた。
「なにをしているんだい、みんな」
「楽しそうだな」
「ゆ、幸村部長に柳先輩!」
「俺達も混ぜてくれないかな」

突然の乱入に少し驚いたが、どうやら純粋に話しに混ざってきただけのようで、赤也は少し安堵した。

「なあ柳に幸村ー、壁ドンってなんだ?」
ブン太が、今日何回目か分からない質問を投げかける。

「ふむ、壁ドン…か。」
「柳は知ってんのかよ?」
「まあ、知らないわけではないが…」

なぜか柳は言葉を濁した。すると今度は幸村が口を開いた。

「ふふ、多分実践しないとブン太には分からないと思うよ。」
「はあっ?どういうことだよ?」
幸村が不適な笑みを浮かべる。

「こういうことだよっ…!!」
「!!!」
すると幸村は、ブン太を壁に押し付け、その両脇を手で塞いだ、いわゆる壁ドン状態である。

「え、ちょっ、幸村…?」
いきなりの状況にブン太は動揺を隠せない。

「ブン太…ちょっと黙ってなよ。」
幸村の息が鼻にかかるほどに顔が近い。いや、もうすでに幸村の鼻がブン太の顔に当たっている。
幸村に五感を奪われたわけでもないのにブン太は動けなくなってしまった。

「んふふ、なんてね。」

そういって笑顔でブン太を開放した。しかしブン太は動けないままだ。

「幸村ぁ、分かりやすかったがちとやり過ぎではないかの?」
「幸村君、そこまでやらなくても…」
「丸井先輩、大丈夫っすか?」
「お、おう…///」
ブン太は赤也の顔を見た。すると、赤也は今まで見たことも無いようなくらい怒りを表していた。

「あ、赤也…?」
「丸井先輩ちょっとこっち来てください。幸村部長、先輩連れてくんで。」
「ああ、ごゆっくり。」
そう幸村に笑顔で返されて赤也の機嫌はますます悪くなる。

「…精市、わざとだろう」
「ん?」

*************

「どうしたんだよっ、赤也!」
赤也につれてこられたのは体育館裏。赤也はブン太の腕を握り締めたままだった。しかも終始無言である。
「赤也…?」
「丸井先輩。」

沈黙が続く。ただ二人の間に夏の爽やかな風が吹いていく。

その沈黙に耐えかねたのか、ブン太が口を開く。
「…なんだよ。」
「ねえ丸井先輩。なんで幸村先輩に顔赤くしてたんすか?」
「は?え、だってよ…//」
先ほどのことを思いだし、ブン太はまた顔を赤く染める。
「丸井先輩は俺の恋人ですよね?なにのなんで部長にあんな顔見せたんですか?ねぇ!!」
そういってブン太を壁に押し付けた。
「あ、かや…?」
「先輩、丸井先輩…俺先輩のこと大好きなんすよ…っ、ねぇ、分かってくださいよ…っ」
赤也がブン太の耳元で囁く。その掠れた声にブン太はぞくぞくした。
「あかやっ分かったっ、分かったから離れろ…っ///」
そういうと仕方が無くというようにブン太の前から退く。

「赤也、落ち着いて聞けよ。…俺はお前が思ってる以上にお前が好きだ。」
赤也は黙って聞いている。
「んで…あかくなったのは、その…びっくりして…」
「びっくりして?びっくりして赤くなるんですか?先輩赤面症でしたっけ?」
「違う!そのときな、あーこれが赤也だったらなって思ったんだ。」
「…はい。」
「そしたら幸村くんが『赤也だったらって想像しちゃった?』
なんて言いやがって…図星過ぎてなんも言えなかった。」
「!!」
「それだけだ…マジごめん。」

すると赤也が思いっきりブン太を抱きしめた。ブン太は二人の間に流れていた
爽やかな風も、蝉が奏でる音色も、蒸し暑くもすっきりとした夏の
天候も、体育館裏という場所でさえも、どこか遠くに行ってしまったように感じた。
それとともに赤也の香りがふわっと鼻を擽る。

「もういいです丸井先輩。俺もごめんなさい強引にしちゃって。ありがとうございます。大好きです」
「俺も…俺も大好きだから、ありがとな。」

二人はやわらかく笑った。そして、甘く優しい触れるだけの口付けを交わした。
二人の間には心地よい風と甘い空気が流れていた。





「丸井!赤也!部活をさぼって何をしておった!!」
「さ、真田副部長…!」
「俺たちが離れてからそんなに時間たってねぇだろぃ?」
「そういう問題ではないのだ!練習時間にコートを離れるとは何事だ!!」
「まあまあ真田、ちょっと落ち着きなよ」
「落ち着いていられるか!俺が鍛えなおしてやる!!」

この後、人一倍恋愛に初心な真田に鉄拳を食らったのは
いうまでもない話。。。

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あきゅろす。
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