Original Story -short-
仮面
昔から、仮面を被ることが得意だった。
周りの望む「私」という存在を演じることが得意だった。
いや、得意ではない。
そういった習慣ができてしまっていた。
「○○さんって、こんなイメージある」
「○○さんは真面目だよね」
そんなイメージを伝えられると、その度に新しい仮面を作る。
いつの間にか自分の本当の顔を忘れて、自分の周りにはたくさんの仮面が転がっている。
たくさんの仮面を使い分けて、毎日を暮らしていた。
そうしなければ、自分という存在を確認できなかった。
相手が望む自分になれば、相手が自分を認めてくれる。
そこから逸れれば、相手は自分を必要としなくなる。
そう思い、生活していた。
だからこそ、日々が疲れきっていた。
もし、そんな日々の中で、日常の中で
「自分の前では演じなくていい。
何を見ても受け入れるから。
嫌いになんて、ならないよ」
そう言ってくれる人が現れたなら……。
体を、精神を、どれだけ休めることができるのだろう……。
逆に、そういった人が現れないと、日々の小さな疲れが積もりに積もって、どこかで雪崩を起こす。
我慢の限界が来る。
言いたくもないことや、言うつもりのなかったことを言ってしまう。
それは、私にとって悲鳴だ。
『助けて』という、悲鳴。
その時は、怒り狂っているかもしれない。
無表情かもしれない。
むしろ、今までにないくらい落ち着き、笑顔なのかもしれない。
でも、本当は、心の中で泣いているんだ。
そんなこと思っていないのに、言うつもりじゃなかったのに、と。
ねぇ。
君が見ている相手は、本当に笑っている?
本当は、苦しんでいない?
それに気付けるのは、その苦しみから助けられるのは、君だけかもしれないよ?
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