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Wonderful Wonder World
昼の茶会(ブラッド)



…………………………………




「アリス、待ちなさい!」


ブラッドが、呼んでる。
でも、知らない!


「アリス!!!」




どうして、こうなったんだっけ。




・・・・・・・






事の始まりは、私がこの世界に残る事を決めてから、数時間帯後のことだった。


「ブラッド?
私、前から言っているけれど、夜の時間帯は寝たいの!
毎回毎回、私の休憩の時間帯、しかも夜の時間帯にお茶会を開くのはやめて頂戴!!」

「私は私のやりたい時にやりたい事をしているだけだ。
絶対に参加をしろとは言っていないんだ。
そんなに休みたいなら、休んでいればいいじゃないか」

「何回も休もうとしているじゃない!
でも休もうとする度、ボス直々にお迎えに来るのに、よく言うわ!」


私がこの世界に来てから滞在している、帽子屋屋敷の領主ブラッド=デュプレは、お茶会が好きだ。
私もよく招待されて参加している(させられている)のだが、困ったことに茶会を開くのが、彼の好きな時間帯の夜が多い。

私の元の世界では、夜は寝る時間だ。
この世界では昼と夕方と夜がバラバラに来るとはいえ、極力夜に寝たい。


「最近、明るい昼間ばかりに寝ているから、疲れがなかなかとれないの。
たまには夜の時間帯以外の時間帯で、お茶会をしてくれないかしら?」

「明るいのが嫌なのであれば、カーテンをもっと遮光性のあるものにすればいいだろう。
すぐに手配をするから、君が好きな柄を選べばいい」

「そういう問題じゃないわよ!
夜の時間帯に寝た方が疲れがとれるの!」

「なぜこんなにも過ごしやすい夜の時間帯に寝るのか、私には疑問でしかないのだが……。
それに、どうして忌々しい太陽が出ている昼の時間帯に茶会を開かなければならないんだ……。
美味しい茶葉と、美味しい茶菓子が台無しじゃないか」



いつもこのやりとりになり、最終的には私が諦める。
ただ、今回は諦めきれない!
せっかく仕事をいろいろやらせてもらえるようになったのに、これじゃあ長続きしないわ!


「もういい!
今回は部屋で休ませてもらうわ!」


ガタッ

椅子が倒れるのではないかという程の勢いで立ち上がり、私は茶会の席を外した。


「な、っ!
………お嬢さん、待ちなさい。
これからこの紅茶に合うスコーンが焼き上がるんだ。
シェフの力作だそうだぞ」

「う………、い、嫌よ!
あなた、さっき休みたいなら休めって言っていたじゃない。
だから今回は休ませてもらうのよ」


スコーンはとても気になるけど、ここで折れたらまたズルズルと茶会に参加することになる。
それだけは避けたい。
いつまでも、この気ままな領主に主導権を握られる私じゃないわ!


「それじゃあ、部屋に戻るわ。
お茶、ごちそうさま」

「アリス、待ちなさい!
アリス!!」








・・・・・・・

というわけで冒頭に戻るわけだけれど……。


私は今部屋には戻らず、帽子屋の領地内をぶらぶらと歩いている。
部屋に戻って鍵をしたところで、どうせまた領主権限とか言って、勝手に鍵を開けて入ってくる。

だから寝る休息は無理だけど、その代わりに気分転換の散歩に出たのだけれど…………。
数時間帯バタバタと働いた後のこの暗さは、やっぱり眠くなるな……。
頭が、ボーッと………………あ、ヤバい、倒れる…。





















「アリス!!」


ガシッ





















え………この声…………ブラッ、ド……?


「なんで、ここに…?」

「君が、部屋に戻ると言っていたのに、部屋にいないから、探しに、来たんだ」


ブラッド、よく見ると息が上がってる。
それに、汗もすごい……。


「顔色が悪いな……。
倒れるほど疲れていたのなら、きちんと言いなさい」

「散々、言ったわ。
疲れているから寝たいって」


ブラッドが撫でてくれる。
手袋越しの手が、ひんやりとしてて気持ちいい。


「とにかく、屋敷に戻るぞ。
次の君の仕事は休みなさい。
メイドには言っておく」

「え、わっ、わわっ!!」


ブラッドは、私を軽々と持ち上げて…………………………お姫様抱っこをした。


「ち、ちょっとブラッド!?
自分で歩けるから下ろして!!」


これは、恥ずかしい!
ここは町中で、住人の目がある。


ジタバタ


「倒れた人間が言う言葉じゃないな。
大人しくしなさい」

「ちょっと立ち眩みしただけよ!
大丈夫だから、下ろして!」

「断る。
いいから大人しくしなさい。
大人しくしないと、キスをするぞ?」

「っ!
わ、わかったわよ。
わかったから、早くして…」


恥ずかしくて死にそう………。









・・・・・・・・

結局は私はそのままの状態で部屋まで連れて行かれ、寝かせられた。
珍しいことに、ブラッドがとても優しくしてくれて、薔薇のアロマキャンドルまで点けてくれた。









それから数十時間帯後。


「だるい……………」


この領主は懲りずに、またお茶会を開いていた。
ただ、いつもと違い、昼の時間帯に。


「忌々しい日差しめ……だるい……」


自分で開いたくせに、とても面倒そうだ。

私も若干面倒くさい……。


「あーもう、バカウサギ!!
なんだよそのオレンジ色の塊!!
こっちにまで広げないでくれる!?」

「そうだよそうだよ!間抜けウサギ!!
僕らは普通のクッキーとケーキを食べてるんだから、そんなオレンジ色の物体、近付けないでよね!」

「オレンジ色の物体じゃねえ!!!
ニンジンケーキとニンジンクッキーだ!
特別に作ってもらったんだ!
誰がお前らなんかにやるか!
こんの、クソガキ!」


今回のお茶会は、静かなお茶会というより、ちょっとしたパーティーだ。

あのオレンジの塊と、あの言い争いを聞いていると、面倒になる……。
エリオットは珍しくウサギに反応しない程、ニンジン料理を大切に抱え込んでいるし……。


「昼の時間帯のお茶会は、嫌なんじゃなかったの?」

「あぁ、嫌だ。
今すぐ部屋に戻りたい程に嫌で、だるい…。
珍しい茶葉がなかったら、部屋に戻っている」

「このお茶会を、この時間帯に開いたのはあなたでしょう。
そんなに嫌なら、あなたの好きな夜の時間帯に開けばよかったのに」

「…………君のそれは、わざとなのか?」

「え………?」


わざと?
何がかしら?


「はぁ…………まぁいい。
アリス、そこのスコーンを食べてみなさい。
この間は退席したから食べなかっただろう。
シェフが、感想を聞きたがっていた様だぞ」

「え、そうだったの?
わかった、いただくわ」


この前から、ブラッドの様子がおかしいけど……。
まあ、いいか。
暗くちゃ見えない、あなたの優しい笑顔が見られたし。



昼のお茶会は、色んな顔が見られるわね















………………………………

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
ブラッドの優しさに気付かない、鈍感な主人公を書いてみましたが、どうでしょう?
楽しんでいただけたら、嬉しいです(*´ω`*)



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