[携帯モード] [URL送信]

Wonderful Wonder World
俺と一緒に(エース)



…………………………


「やっと見つけた!
エース、そこに入って行かないで止まって!」


ここは、ハートの城の領土。

俺はユリウスに呼ばれたため、20時間帯程前に城を出た。
だが、どれだけ歩いても、どれだけ曲がっても、一向に時計塔に着かない。

今度こそ近道だろうと思って茂みに入ろうとしたら、よく聞く声に呼び止められた。


「あれ、アリスじゃないか」

「『あれ、アリスじゃないか』じゃないわよ!」


彼女は余所者。
余所者の女の子、アリスだ。
ペーターさんに連れて来られたらしい。

何がいいのか彼女は、俺が住んでいるハートの城に滞在している。
ストーカーと呼んでいるペーターさんがいる所に、よく滞在するなと若干感心している。


「ユリウスが、呼び出したはずのあなたが一向に来ないって、怒ってたわよ!
私はしばらく休みだから、迎えに来たわ!」


彼女は、元の世界に戻りたいらしい。
そのために、この国の住人に会う必要があるそうだ。
今回もそれでユリウスの所に行っていたのだろう。


「ははは、君とユリウスはほんと仲がいいなー。
妬けちゃうぜ。
でも、迎えに来てもらえるなんて、俺って愛されてる?」

「バカなことを言ってないの!
ほら、行くわよ!!」


そう言いながら、俺の腕を掴み引っ張っていく。
簡単に振りほどける強さだけど、大人しく引っ張られていく。


「君って本当にせっかちだなー。
もうちょっと心に余裕を持とうぜ?
そんなんじゃ、すぐ疲れちゃうよ」

「誰のせいでせっかちになってると思ってるのよ!
20時間帯以上もユリウスを待たせてるんだから、あなたは少しは急ぎなさいよ!」

「あはは、ユリウスならきっと許してくれるよ」


そう、ユリウスは口調はキツイけど、なんだかんだで許してくれる。
俺はきっとそれに甘えている。


「あ、そうだ。
遅れたお詫びに、お土産買っていこう。
確かこの近くに、ユリウスが美味しいって言っていたお菓子のお店があるんだよ」


ふと思いったったことを言ったら、彼女は気になるようで歩みを止め、こちらに振り向いた。


「そうなの?
ユリウスが美味しいと言うなら、ハズレではないわね。
領土内のお菓子屋さんはだいたい見たと思っていたのだけど、まだあったのね」


こういう所は女の子だと思う。
甘いものが好きで、お菓子をよく見ている。
他領土に行く時や、陛下とお茶を飲む時などにお菓子を持っていくらしい。
前に時計塔に行った時も持って行っており、1つもらったのだが、美味しかった。


(すごい嬉しそうな顔してるなー。
さすが女の子、っていうところかな)


頑張って抑えているのだろうが、口元が若干ニヤけている。


「近くなのはわかってるから、俺でも行けるぜ!
確か……………こっちだ!」


今度は俺が彼女の腕を掴み歩き出す。

つい最近横を通ったばかりなので、着く…………はずだ。










・・・・・・・・・・・

2時間帯後


「エース……………ここはどこなのよ」

「はははは、どこかの森かなー?」

「…………………はぁ。
あなたを信じて、着いて来るじゃなかったわ……」


道は覚えていたつもりであったし、途中までは間違ってはいなかったはずだ。
だが、気付いたら森の中に入っており、今は二人で休憩をしている。


「うーん……おかしいなー。
こっちで合ってると思ったんだけどなー」

「あそこの道を、右に曲がればよかったんじゃないのかしら……?」

「ん?どこの道?」

「あなたが悩んだところの道よ」

「あー、あそこか。
もしかしたらそうかもしれないね。
まあでも、騎士は過去を振り返らないからね!」

「…………はぁ…。
すごい置いて行きたいけど、あなたを連れて行くってユリウスと約束しちゃったし、帰れないわね…」

「ははは、いいじゃないか!
旅は道連れって言うだろ?」

「どうして城の領土から時計塔に行くまでに、旅をしなくちゃならないのよ……。
…………あ、夜になった」


話していると、夜の時間帯になった。
どこら辺の森なのかもわからないし、今ここには俺だけではなくアリスがいる。
下手に動かない方がいいだろう。


「しょうがない。
今はここで野宿をしよう」

「そうね……」


彼女と野宿をするのは初めてではない。
なので、テントの準備などは早いものだ。
もともと彼女は物覚えがはやい、ということもあるだろう。

一人でもテントを張るのは簡単にできるが、一度教えて以降は手伝ってもらっている。


「アリス、焚き火用の木を拾ってくるからこれだけお願い」

「わかったわ」


最後の固定のものだけ彼女に渡し、小枝を拾っていく。
彼女と旅をするようになってから、少しの間火をつけ温まってからテントに入るようにしている。

ある程度拾い、テントのある場所に戻る。
どこの部分の物か言わずに渡したが、形だけで理解してくれたようだ。
綺麗にテントが出来上がっていた。


「今回の夜も冷えるわね」

「うーん?そうかな?
俺は、いつもと同じくらいだと思うけどな〜」

「着ている量が違うわ。
こんなことになるなら上着を持ってきていたのに……」


たまに旅になりそうな時、アリスはコンパクトにできる上着を持っている。
今回は急だったため、持っていないようだ。


ガサガサ


「はい、これ。
俺は平気だから、君が着ていなよ」

「…………ありがとう」


赤のコートを脱ぎ、彼女に渡す。
大きさがだいぶ違うため、受け取るのを躊躇っていたようだが、普通に受け取ってくれた。


「…………………あれ?
木が小さすぎたのかな?」


拾ってきた木が、燃え尽きそうになっている。
大きい枝だと火が付きにくいため小さめのものを選んだのだが、火の勢いが今回は強かったらしい。
まだあまり暖まっていないのだが……。


「あら、ほんとね」

「君はまだ暖まってないだろ?
俺、もう少し拾ってくるよ」

「え、エース?
まっ…………」


アリスの静止の言葉が聞こえなかったわけではないけど、構わず立ち上がり拾いに行く。



またある程度拾って戻ってくると、そこに彼女はいなかった。
代わりに、テントの中で何かゴソゴソという音がする。


「…………………アリス?
何をやってるの?」


出入り口を開けながら、中にいる人物に声をかける。
気配ですぐにわかる。


「あら、エース、おかえりなさい。
ちょっとテントの中覗いたら、落ち葉とかが入り込んでたから、掃除しているのよ。
あなた、前回使った時ちゃんと綺麗にした?」

「あー………そういえば、前回使った時はペーターさんにすごい怒られて、慌てて片付けたんだよなー。
ペーターさんってば、酷いんだぜ?
『今すぐ片付けないと、そのテントを燃やしますよ』なんて言うからさー」

「どうせ庭かどっかで広げてたんでしょう?
呼び出されでもしてたんじゃないの?」


中に入り込んでいる落ち葉を拾いながら、彼女は俺と会話をする。


お尻をこちらに向けた状態で。


奥から拾っているのだから仕方ないのかもしれないが…。


(アリスって、妙なところで危機感が足りないんだよなー)


悪戯心が湧き出てくる。




…………………………ナデ



ビクッ




「っっっ!?!?!?
な、何するのよエース!!!!」



パンッ



悪戯心が勝り、こちらを向いていたお尻を撫でると、驚いた彼女は振り向きながら俺の頬を平手で思いっきり叩いた。


「痛いなー、これ絶対赤くなってるぜ…?
君が、無防備にお尻を向けてるのがいけないんだよ。
俺は騎士である前に、男なんだぜ?」

「だからって、急にセクハラするんじゃないわよ!」

「………へぇ。
急に、じゃなければいいんだ?」

「え…………あ、それは、その……」


顔を真っ赤にしながら、アリスは言葉に詰まっている。


(ふーん……これは…)

「ねぇアリス、教えてよ」



ビクッ



一気に詰め寄り、彼女の耳元で尋ねる。

彼女はちょっとずつ下がってるけど……。


「逃さないぜ?」


ガシッ


腰を抱きかかえるようにし、それ以上下がれないようにする。


「ねぇ、アリス………?」

「〜〜〜〜〜〜っ!!!
こ、言葉の綾よ!!!」

「へぇ…言葉の綾、ね。
……君って、素直じゃないよなー」

(ま、今はそれで誤魔化されておこうかな)



俺みたいなやつに心を許すほど、君はこの世界に馴染んできている。
この世界に惹かれていっている。

それは、この世界に残るのには、十分な理由。


それでも………だからこそ、君は迷っている。

元の世界に帰らなければいけない。
だが、この世界にも馴染んできた。
責任感が強い君なら、きっと迷うだろう。



(君が一緒に迷ってくれたら、もっと楽しくなるかな?)









俺と一緒に、この国を迷っていこうよ


























………………………………
読んでいただき、ありがとうございました!!
ハートの城、ハートの騎士エースのお話でした!

エース君はヤンデレイメージがあるので、普通に書くのがなかなか難しいですw

最後、グダグダになってしまいすいません(*_ _)

楽しんでいただけたら嬉しいです(*´ω`*)

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!