[携帯モード] [URL送信]

Wonderful Wonder World
名前を呼んで(ボリス)


……………………



「なぁ!ちょっと待って!
何怒ってんの!?
俺、何にも悪いことしてないよ!?」


いつもみたいにアリスと部屋で話をしていたら、急に怒りだして部屋を出て行った。
今、アリスを追いかけてる最中なんだけど………。
今回はあの子が嫌がることはなんにもしてない………はず、なんだけど…。
銃も持たせなかったし、胸の音を聞くこともしてない。
それなのに、何をあんなに怒ってるんだろう。
余所者ってわからない。


「ねぇ!待ってってば!
俺、何かした?
あんたが嫌がるようなことしたなら謝るから、教えてよ!」


ズンズンズンズン

アリスは全然止まってくれない。
あー、もう、しょうがない。こうなったら………っ!

バッ!


「はい、捕まえた。
猫から逃げられると思ったの?
ねぇ、何怒ってるのか教え…………」


ジャンプして捕まえて顔を覗きこんだら、アリスはすごい寂しそうな顔をしていた。
怒っている顔をしていると思っていたのに、なんで…。


「え、どうしたの?
俺、ほんとに何かした?
あ、謝るし、もうしないから教えてよ」


アリスがこんな顔をしていると、すごい不安になる。
また元の世界のことでも思い出したのかな…。
まだ、俺のことを見てくれていないのかな…。


「……………で……」

「…え?」


考え事をしていたら、アリスが何かを言った。
なんだか、さっきと違って顔が真っ赤だ。
怒っているような、寂しがっているような、恥ずかしがっているような、変な顔。


「ごめん、聞こえなかった。
もう一回言って?」

「…………っで、って言ったのよ…」

「え、な、なに?ごめん、もう一回」

「………名前を呼んでって言ったのよ!
私の名前はあんたじゃないわ!
アリスよ!
さっきから一度も名前を呼んでくれないじゃない!」


あー……そういうことか。
確かに、話している最中、アリスの名前を一度も呼んでいない。
それで寂しくなっちゃったわけね…。
寂しくなった顔を見られたくなかったから、逃げ出した、と。
逃げ出した原因がわかると…………。


ニヤニヤニヤニヤニヤ


「な、何よボリス。ニヤニヤして!
い、言ったんだからもういいでしょう!
今は一人にしてちょうだい!」


あー、もう、可愛い。
ほんとアリスって、なんでこんなに可愛いんだろう。 


ギュッ


「ちょっとボリス!?
離れなさい!ひ、人が……っ!」

「大丈夫だよ、誰も来ない。
もし来たとしても、俺が撃ち殺してあげるから、あんたはなんの心配もしなくていい」

「こ、殺しちゃダメよ!
って、そうじゃなくて、離れてってば!」


ジタバタ


「すごいドキドキしてる。恥ずかしいの?
動いてるのに、心臓の音、振動ですごい伝わってくるよ?」

「恥ずかしくないわけないでしょう!
こんな誰かが通るかもしれない場所で抱き締められてるのよ!?」

「ふーん………。人が来なければいいんだ……?
それなら、部屋に行く?」

「そういう問題でもなくて………っ!もう!離して!」


バッ


「それじゃあ私、散歩にでも行ってくるからっ!」


あ、逃げられちゃった。
でも、二回も逃さないよ。
猫は狙ったものは逃さない。


「ダメだよ、逃げちゃ」

ギュッ


「だからボリス!離れてって……!」

「アリス」


ビクッ


「ごめんね?気付かなくて。
これからはちゃんと呼ぶよ。沢山、ね?
だから、どっかに行かないで、俺の所にいて…」





名前を呼ぶことが鎖になるのなら、何度だって呼ぼう



[次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!