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夢小説(その他)
バレンタイン (おそ松さん ギャグ?)

「そもそもさぁ、バレンタインなんて元々司教が死んだ日だよ。それをさ、何をどうとち狂ってチョコレートあげる日なんかになったんだか・・・全くもって理解しがたいよね!」

そんなチョロ松の言葉に

「チョコレートあげる文化って日本だけだろ?」と一松が呻く。

「まぁ、言う程欲しくないけどねー」

そう叫んだおそ松に

「食べたければ、自分で買えるしな」とカラ松が頷く。

「良いこと言うー!」と十四松が頷いたところで

「・・・・・・・・これ、前もやったよね?」とトド松が冷めた目で呟いた。

「あぁ、そうだよ!毎年恒例だよ!!でも仕方ないじゃん!!欲しいけど誰にも貰えないんだもん!!しかももう夕方だよ?誰にも貰えないまま終わるのが確定してるじゃん!!」

一同を代表するようにおそ松が叫んだところで、リーンという電話のベルが鳴り響いた。

「なんだよ、こんな時に」

ぶつぶつと文句を言いながら「もしもし」と電話に出れば『あ、もしもしー』という甲高い女性の声が答える。

「あれ、アサヒじゃん。どうしたの?」

おそ松の言葉に、ざっと残りの五人が近寄ってくる。

「え、もしかして・・・この時間に電話ってことは・・・もしかする?」

一同を代表したトド松の主張に、誰ともなくゴクリと唾を飲む。

「え、何?今からこっち来んの?マジで?!わ、わかった。待ってるから!」

ガシャンと電話を切るなり、

「おまえら喜べ、今からアサヒが来る。」とおそ松が呟く。

「バレンタインにアサヒが来るってことは、もしかして・・・・そういうことなのか?」

期待に満ちたカラ松の声に

「確かにアサヒって律儀だし、そういうことも考えられるよね。」とチョロ松が頷く。

「うんうん、別に期待してるわけじゃないけどー」

十四松が明るく笑い、

「まぁな、期待してるわけじゃないけどな」と一松が同意した。

「とりあえず、アサヒが来るまでのんびり待ってようか。」

そんなトド松の提案に、ぞろぞろと一同が二階へと戻る。

それぞれが所定の位置に座り、一息ついたところで

「ちょっと俺、玄関の様子見てるわ」とおそ松
「郵便を確認してくる」とカラ松
「今、何か物音しなかった?」とチョロ松
「猫の声がする」と一松
「足音したよね?」と十四松
「電話鳴ったよね?」とトド松。

一同がタイミングをあせたように立ち上がる。

「いや、まだアサヒが来るって電話してきて5分も経ってねぇから!どんだけ期待してんのおまえら!」

そうツッコミを入れるおそ松に

「人のこと言える立場か、クソ長男!」とチョロ松が吠える。

「抜け駆けなんてさせないぜ、ブラザー」と笑うカラ松に

「黙ってろクソ松。」と鋭い一松の声が飛ぶ。

「もう恥ずかしいから少し落ち着いてよ、ダメ松兄さんたち。」

トド松がかちかちとスマフォの背面を触りながら呻く。

「トッティ、それどこ触ってんの?」と十四松が突っ込む。

「何なんだよおまえら、ちょっとは座って待ってろよ!幼稚園児じゃないんだからさぁ!」

「その言葉、そっくり返すぜ、おそ松」

「ぶっちゃけ、この時間にわざわざアサヒが電話してきてまで来るといえば、それ以外ない気がするわけで・・・・・そりゃ、最初に貰いたいよね。誰だって」とチョロ松が頷く。

「こういうのは長男に譲るべきだろ!退けよおまえら!」

「何言っての、こんな時くらい可愛い末弟に譲ってよ、おそ松兄さん!!」

「末松に譲るべきっすよねー!」

「さり気なく自分も入れてんじゃねぇよ、十四松。」

「それどっちから数えても僕と一松が不利じゃん。」

ぎゃあぎゃあと喚きながら、大概の衣服を引っ張り合う醜い争いが続く。

「よぉし、じゃあここは誰がアサヒから最初に貰うか、平和的に決着をつけようじゃないか!」

パチンと指を鳴らしカラ松が笑う。

「まぁ、残念ながらイケメン対決ではこのオレの圧勝という事になるが・・・・」

「同じ顔で何言ってんだ、お前。」と一松が呻く。

「アサヒに片手で一つずつ差し出して貰うと仮定して・・・・二人までなら最初に貰えるってことだよね。」とチョロ松が呟いた。

「長兄松からがいいと思う人、はぁーい!」

さっと両手を挙げるおそ松に、そっと傍でカラ松が手を上げる。

「いや、それ何の解決にもならないから。年中松と末松も人数同じだから。」

チョロ松の指摘に、一松、十四松、トド松が頷く。

「ここはさぁ、やっぱりバレンタインだし・・・・ハートが似合う可愛い順から貰うのは?可愛い順とくれば、ボクと十四松兄さんで決まりだよね。」

「いや、言う程お前可愛くないよ。ただあざといだけだよね。」

トド松の主張に、一松が冷めた言葉を投げる。

「ここはやっぱりちゃんとしている、まともな人から貰うべきじゃない?その理屈で言うとまずは僕だよね。仕事探しもしてるし、一番ちゃんとしてる。次は・・・まぁ、猫カフェでバイトの経験もある一松かな。うん、このクズみたいな6人の中では僕と一松が一番ちゃんとしてるよね。」

「はぁ、何言ってんのシコ松。お前の仕事探しなんてフリじゃん。」

「シコ松って言うなっ!!、オイコラクソ長男!!」

「チョロ松兄さん、バイト経験ならボクでもいいじゃん!」とトド松が食い下がる。

「トッティ・・・今ぼくを切り捨てたね。」

すんと冷めた視線を送る十四松。

その肩をポンとたたき

「ここは男らしく筋力のある順で!とくればオレと十四松で決まりだろう!」とカラ松が言い出す。

「え、その貧相ボディで筋力がある順とか言っちゃうの?」とトド松が返す。

バチバチと火花が散る中、

「こうなったら誰が強いか決着をつけようじゃねぇか。長男、次男をなめんな!」とおそ松がパンッっと両手を打った。

「手加減しないぜ、ブラザー」

「悪いけど、僕と一松の機動力を舐めないでよね。」

「・・・・・全員、潰す・・・・」

「十四松兄さんの出番だよ、後方支援は任せて!」

「倒―す!!」

ざっと一同が戦闘体勢に入ったところで、すぱーんとふすまが開いた。

「何やってんの!アサヒちゃんが来てるわよ!」と母の声が響く。

その背後で「お邪魔します」と明らかに仕事帰りなアサヒが顔を出した。

「アサヒ!え、あ・・・・うん、待ってたよぉ、座って、座って!!」

ぎすぎすした空気もなんのその、

何事も無かったフリをして長男がササっと部屋へ入るように勧める。

「で、何の用事?」

1対6

部屋の中央で、アサヒの前に6人並ぶという明らかに妙な座り方で長男が用件を切り出す。

「用事っていうか・・・・・皆、チョコレート好き?」とアサヒが言い出した。

アサヒの手には通勤用と思われる仕事鞄とは別に、大きめの紙袋が3つ。

ごくりと一同が喉を鳴らす。

誰ともなく視線で会話しつつ

紙袋が三つってことは、中に二つずつチョコレートが入ってるってことか・・・なんて想像をする。

「そりゃ勿論、好きどころじゃないよな。な、おまえら!」

おそ松の言葉にうんうんと5人が同時に頷いた。

「そっか、良かった。じゃあ、手伝って欲しい。」

「・・・・・え、・・・・手伝う?」

すでに貰う体勢になっていて、差し出しかけた手を所在なさげに動かしながら6人は同時に首を傾げた。

「・・・・・・・・・・・貰ったんだけど・・・・食べれなくて。捨てるのは、くれた子に悪いでしょ?」

がさっと紙袋を目の前に置きながらアサヒが答える。

中にはそれぞれの袋いっぱいに、包装された可愛い箱が所狭しと押し込められている。

「えっと、アサヒ。コレは・・・・・」

チョロ松の言葉に

「今日バレンタインじゃないか。毎年貰うんだよ・・・・。去年までは、チョコ好きの同僚がいたからあげてたんだけどあいつ転勤しちゃって・・・・。こんなに貰ってもどうしようもないんだよね。いや、好意だから有り難いんだけど・・・・・えっと、これは誰からだ?」

一つ一つ確認しながら、アサヒが答える。

傍に置いたメモ帳にきちんと誰から何を貰ったのかこまめに書いてる辺り、お返しを考えての行動だろう。

「はい、先生。ちょっと質問いいですか?」

すっとおそ松が手を上げる。

「はい、松野おそ松さん、どうぞ。」

アサヒが作業をする手を止めておそ松を指し示した。

「なんで女性である先生がこんなに大量のチョコレートを貰えるんですか。」

「・・・・・・・・・・・・・・・なんでだろうね。」

その質問にアサヒは、困ったように眉を寄せて呻いた。

「普通、男性にあげるもんだと思うんだけどね・・・・。この袋は確認終了。開けて食べていいよ。」

その言葉に数秒の葛藤の後、思い思いに手近なチョコレートを開ける。

「うわ、めっちゃ気合い入ってるチョコレートじゃん。これ結構高いやつだよね。」

トド松の言葉に、「あぁ、それなー・・・その人、毎年ブランドのチョコくれる。」

「アサヒは食べないのー?」

もぐもぐと口を動かしながら問う十四松に、アサヒは苦虫を噛みつぶしたような顔をした。

「私、バレンタインのチョコレート食べれないの。というか、それ毎年言ってるのに、くれるんだよな・・・・・」

「お返しが凝ってるとか・・・・?」

一松の問いに、アサヒは首を傾げる。

「いや、別に・・・。フツーにホワイトデー特集とかで紹介されたお菓子と小物返すだけ。むしろ、あげてる方が高い場合もあるんじゃない?ある程度金額は合わせてるつもりだけど・・・・3倍返し、なんて時代じゃないよね。というか、私男じゃないからそこまでする必要ないと思うし。」

がさがさと次の袋の整理を始めるアサヒは少しうんざりしたようにも見える顔で、また丁寧に一件ずつ送り主を確認する。

「というか・・・・・アサヒって甘い物好きだよね?」

「うん、好きだね。」

「チョコレートも食べるよね?」

「食べるね。」

「なんで、これ食べないの?」

不思議そうに尋ねるチョロ松に、アサヒはげぇっと顔を歪めて

「それ、聞いちゃう?」と答えた。

「別にすぐ傷むものでもないし、時間かけて食べればいいじゃん・・・と思って。」

チョロ松の言葉に、「それもそうだな」とカラ松が同意した。

「・・・・・・・・・・あんまり気分良くなる話じゃないんだけど・・・・」

と前置きをしてからアサヒははぁ、とため息をついた。

「学生の頃に・・・後輩がくれたチョコレートの中にさ・・・・異物が入ってて以来、バレンタインのチョコレートだけが食べれなくなったんだ。」

「・・・・・・・・・・異物・・・?」

「髪の毛とか、爪とか・・・そういうの。なんか当時そういうおまじない流行ったらしくて・・・・喜んで口の中に入れた瞬間にそれだよ。もう完全にトラウマになっちゃって・・・・。最初はさ、手作りだけが全くだめになったんだけど・・・・その翌年に市販品に仕込まれてて、それっきりバレンタインのチョコレートってだけで拒否反応が出るんだわ。」

その言葉に、一同の手がぴたりと止まる。

「あ、今付き合いのある中でそういうことする人はいないよ。大丈夫って頭では分ってるんだけど、学生時代の記憶が強烈過ぎんの。こればかりはどうしようもないし・・・・だから、食べれないって伝えているんだけど・・・・なぜか、毎年貰うんだよなぁ。」

「はい、先生。」

「はい、松野カラ松さん、何ですか。」

「どうやったらチョコレートを貰うことが出来ますか。」

「知らんよ。というか、どうやったら貰わずにすむのかを逆に聞きたい。」

「はい、先生。」

「はい、松野チョロ松さん。何ですか・・・・って何だよ、このやり取り。」

「一発殴らせて貰っても良いでしょうか。」

「嫌だよ、なんでいきなり殴られるの。何その発想。怖いわ。」

「正直に羨ましい上にねたましいからです。」

「素直過ぎんだろ。」

そうあしらいながらアサヒが二つ目の袋の整理を終える。

「ねぇ、先生」

「え、まだこのやり取り続くの?何ですか、松野一松さん。」

「・・・・これ、本命じゃないの?」

箱の間に挟まったカードを見ながら一松が呟く。

「その人、毎年私に『抱いてくれ』って書くから恒例なんだと思う。」

「はいはいはい、先生、質問いいっすか」

「いや・・・だからそろそろ、このやり取りやめない?」

「質問いいっすか?」

「分ったよ、何ですか、松野十四松さん。」

「抱いたことあるんっすか。」

「ないよ、っていうか、それ何のために聞いたのさ。」

呆れたように答えたアサヒの手には、三袋目最後のチョコレートが握られている。

それをぽんとアサヒが置いたところで

「はい、先生!!」とトド松が声をあげた。

「何なの、あれなの、松野家には6人全員言わないといけないみたいなルールでもあんの?はいはい、何ですか、松野トド松さん。」

「これはボク個人というよりは、多分ここにいる全員が思っていることだと思うんですけど・・・・代表してボクが質問します。先生はボクたちにチョコレートをくれる気はないんですか!」

末っ子の主張におお、と残りの五人が歓声を上げ、手を叩く。

よく言った、とばかりの拍手が場に木霊する中アサヒは、は?と間の抜けた声をあげた。

「今、食べてるじゃん。」

「いや、これは違うよね。アサヒがくれたんじゃなくて、アサヒが食べれないものを俺らが処理してるだけだよね。うまいけど。」

もぐもぐと口を動かしながらおそ松が答える。

「そうだな、うまいけど。」

「おそ松兄さんの言うとおりだよね、美味しいけど。」

「うん、んまい。」

「んまー」

「ほんと、美味しいね・・・」

6人が6人、それぞれにチョコレートを頬張りながら頷く。

「私が、お前さんらにチョコレート?はっ、あげるわけないじゃん。」

へっと鼻で笑い不機嫌そうな顔をしたアサヒに

「「「「「「なんで!!!」」」」」」と6人の声が重なる。

「いや、なんでって・・・・」

今度は呆れたように笑うアサヒにおそ松がハッとしたような顔をする。

「よくよく考えたら、アサヒから一度も貰ったことなかったわ!」

「・・・・・・・言われてみれば・・・・。それなりの仲のはずなのに貰ってないな。」

「社会人だから忙しいってのは分るんだけど・・・・貰ったことないね。」

「いや、催促するのは卑しいって分ってるんだけどさ。」

「チョコレート・・・・・」

「欲しいよねぇ・・・」

6人がそれぞれに呟いて、しょんぼりした顔をする。

「あのなぁ、言っとくけど・・・・元々、私からのチョコレートなんていらねぇって言ったのそっちだからな。」

「はぁ?そんなこと俺らが言うわけないじゃん。」

アサヒの言葉におそ松が真っ先に反論する。

「うわ、自分が言ったのに忘れてんの?最悪なんだけど・・・・」

アサヒがジトっとした眼差しでおそ松を見据える。

「まぁ、おそ松は馬鹿だから言ったかもしれないが、オレはそんなこと言ってないぞ。」

「カラ松にもいらないって言われたんだよ。」

「ジーザス!馬鹿な、オレにはそんな記憶はないぞ。」

「言った方は忘れるって本当よね。」

「まぁ、まぁ、長兄松はそろって馬鹿だから仕方ないけど、僕はそんなこと言って・・・・ないよね?」

「はい、ダウトー!チョロ松にも言われてまーす」

「・・・・・・・・・・・おれも言ったの?全然覚えてないんだけど。」

「一松にもまぁ、言われてるな。」

「ぼくは言ってないと思う−」

「残念でした、十四松にも言われました。」

「え、ボクは言ってないよね?もし言ってたとしても兄さんたちにそそのかされたとか、そういうやつだよね。」

「さぁ、そこまでは分らないけど・・・・トド松からも要らないって言われたからなぁ。いらないって言われた相手にチョコレートなんて準備するわけないじゃん。」

バッサリと切り捨てられ、6人が慌てて円陣を組む。

「え、マジで、俺全然覚えてないんだけど。」
「オレもだ。まるで記憶にないぞ。」
「でもここまで言われるってことはアサヒの勘違いとかではないよね。」
「6人が6人、要らないなんて言って、覚えてないなんてあるのか?」
「あはは、全然記憶になーい」
「むしろチョコレート欲しかった記憶しかないよね。」

ひそひそと相談をし合い、代表したようにチョロ松がさっとアサヒを向いた。

「ち、ちなみに・・・・この中の誰か、例えば馬鹿でクズで考えなしのクソ長男が僕達のフリをして断った、なんてことは・・・・・」

「これだけ長い付き合いで間違えると思う?と言い返したいところだけど・・・・6人揃った状態で断られたんだからそれはないな。」

「えー・・・・ちなみにそれはいつの頃でしょうか・・・・」

おずおずとした一松の問いかけに

「中学の時だね。」とアサヒは答える。

「中学の時なんて、それこそ欲しくて欲しくてたまらなかった時期だと思うんだけど・・・・」

「そんなこと私に言われても困るよ。覚えてないなら説明してあげようか?」

「若干怖いけど、おなしゃす!!」

震える十四松の声に、アサヒは一つ息を吐いて答える。

「中学の時の帰り道に、わざわざ急いで帰って自宅からチョコレート持って松野家の家の近くで待ってたの。6人が並んで帰ってきたから、『いつも有難う』って言ったら・・・・6人で顔見合わせるなり・・・」

思い出して苛立ったのか、若干不愉快そうな顔をしてアサヒはびしっと長男から順に指を指して答える。

「えーアサヒにチョコレートなんて貰っても嬉しくない」
「嘘でしょ、俺がそんなこと言ったの?!」

「確かに。こんなもの貰ってもな・・・」
「馬鹿な、オレがそんなこと言うはずが」

「本当、正直言って迷惑だよね」
「嘘だ、絶対何かの間違いだって!!」

「ホント、ホント。こんなの渡されても困るだけ。」
「はぁ?!マジか・・・・当時のおれを殴りたい・・・」

「チョコなんていらなーい!」
「ボゥエ!!」

「何コレ、馬鹿にしてるの?いらないよ、こんなの」
「えぇぇ!!嘘でしょ!!」

「欲しいもの我慢して、少ないお小遣いを貯めて・・・6人分一生懸命用意した当時の私がどんだけ傷ついたか・・・・・」

腕を組み、当時をしみじみと思い出すアサヒの言葉に一同は青い顔をして震える。

「ち、ちなみにそのチョコレートはどうなったんだ?」

すっと手を上げて問うカラ松に

「えー・・・・腹が立ったから、帰り道にあった同級生に押しつけた。えっと・・・」

数秒間記憶をさかのぼるように呻いてから

「あぁ、そうだ。天野だ。天野 サクヤ、いただろサッカー部の・・・」

「「「「「「それだぁああ!!」」」」」」

アサヒの言葉に、6人が同時に声をあげる。

その勢いに、びくんとアサヒは身をすくませた。

「思い出した、天野だよ。あいつのせいじゃん!!」

「あぁ、そうだな。あいつが余計な事さえ言わなければ・・・」

「僕も思い出したよ。しかもあいつ確か翌日にチョコレート貰ったって自慢してきたんだよね!」

「おまえら結局貰えなかったのか、って言われたの思い出した・・・・」

「しかも6つ貰ったって言われたよね・・・」

「全部、アサヒのチョコだったんじゃん。むかつくー!」

ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる一同に、若干引いた様子を見せてからアサヒはコホンと咳払いをして身を正す。

「まぁ、思い出したらそれでいいけど・・・・だから私があげることはないな。」

そう会話を終わらせたアサヒに、おそ松が慌てた声を出す。

「ちょ、待って待って待って、アサヒ、説明させてっていうか、弁解させて!」

「なに?」

「その当時俺らが言ったことは、本心じゃなかったんだよ。」

「へぇ、」

「あれ、アサヒ。もしかして今でも怒ってる?」

「いや、正直忘れてたけど・・・・思い出して今更若干イライラしてきた。当時の私のお小遣い、月額500円だったんだぞ。何ヶ月貯めたと思ってるんだ!」

「ホントごめんね!いや、マジで!!」
「すまなかった」
「本当にごめんね」
「・・・・・ゴメン」
「申し訳ないっす」
「ホント、ごめん。」

揃えたように謝罪の言葉を口にしながら、手を合わせて頭を垂れる。

「それで、その『言い訳』とやらを聞こうじゃないか。」

「聞いてくれんの?何だかんだ言って、アサヒってマジで優しいよね」

おそ松が安心したように笑う。

「褒めたところで何も出ないぞ。」

しれっとしたアサヒの返答に、真面目な顔をしておそ松が話し出す。

「当時さぁ、天野に言われたんだよ。幼なじみの子・・この場合、アサヒね。アサヒからチョコ貰うのはダサイみたいなことを。」

「母親に貰うのと同じだ、とまで言われたな。」

「そうそう、やっぱり当時そういう小さいプライドっていうの?あったもんね。」

「気恥ずかしい感じだよね・・・」

「うんうん、義理と分ってるなら尚恥ずかしいとも言われたー」

「貰えないから施されてるだけって言われたよね。」

長男から順に説明された言い訳に、

「正直、そこまで言うのって逆にこじらせてない?」

そうアサヒは呆れたように呟いた。

「いや、そりゃ今ならそう思うけど・・・・当時多感なお年頃よ?まして中学に上がったばかりでちょっと格好つけたくなる時期だよ、そりゃ友達の言う事に従ったりしちゃうよ。」

「おまけに、おまえらは6つ子だから目立つだけで、本当はあげたくないって思ってるとかなんとか言われたもんな。」

「そうそう、今思い返すとなんで素直に話聞いちゃったんだろ。」

「思い出したら腹たってきた・・・・」

「うんうん、馬鹿みたいだったよね。」

「しかもそれが原因でずっとチョコ貰えなかったとか・・・あり得ないんだけど・・・」

はぁ・・・と6人が同時に後悔のため息をはく。

「えっと何、つまり友人に私から貰うのだせぇよな。って言われたから断られたってこと?」

「ん、まぁ、そんな感じ。しかも確かあの時、家に着いてから『何で断ったんだろ』って6人で頭抱えた記憶が・・・・」

「頭抱えたどころか、床まで転がってマミーの雷が落ちたぜ。」

「あー、もうホントに当時の僕らって馬鹿なんだけど!」

「しかも、そのおこぼれを天野が貰っているという事実・・・」

「許すまーじ!」

「今更ながらむかつくよね」

後悔が怒りに転じたのを、見つめたまま・・・ふふとアサヒが笑う。

「アサヒ?」

不思議そうなおそ松の声に、アサヒは笑いながら

「あ、いや・・・・くだらないなと思って。」と答える。

「くだらなくはないぞ、」真剣な顔をしたカラ松に

「くだらないよ、だって、当時結構凹んだんだもん。」とアサヒは笑う。

「え・・・・そうなの」申し訳なさそうなチョロ松の声に

「そりゃそうだよ、それなりに仲良くしてると思った相手に面と向かっていらない、だよ?」

「・・・・・・・・・申し訳ありませんでした。」ぺこりと一松の頭が下がる。

「その理由がそんなくだらないことだったなんて今更知って・・・」

「ごめんね、アサヒ。傷つけちゃったんだね。」しょんぼりした十四松に

「・・・逆に笑える。」とアサヒがけらけらと楽しげな声を出す。

「笑えるの?!アサヒのメンタル凄い強いんだけど!!」驚いたようなトド松の指摘に、

「何年経ったと思ってんのさ。それに社会人だよ、その程度で凹むような豆腐メンタルだと生きてけないよ。」

とアサヒはニコニコと答える。

ひとしきり、楽しげに笑ってから

「あー・・・・・笑った。笑った。はぁ、疲れた・・・笑い疲れたし、帰るわ」と呟く。

「あ、あの・・・・アサヒ」

笑いが収ったところで、おずおずとおそ松が声を出す。

「んー、なぁに?」

「それらを踏まえた上でさ−・・・・ごにょごにょ・・・」

それ以上は言いづらかったのか、言葉が潰れる。

それを引き継ぐようにカラ松が声を出し

「その、そういう事情だったってことを理解した上で・・・・ごにょごにょ」

と後半はまた言葉が潰れた。

「そうそう、当時のことは反省したうえで・・・その、ねぇ・・・」

ちらりとチョロ松が一同を見ながら呟く。

「あの・・・そういう事情だったわけで・・・アサヒにも悪いことしたと思うんだけど・・・・・」

同じようにちらちらと兄弟を見ながら一松の声が続く。

「チョコレート・・・・・」と、十四松がその後を追った。

「その・・・・なんというか・・・つまり、そういう・・・・」

トド松が言いづらそうに視線を下げる。

ほぼほぼ、その潰れた言葉と態度で言いたことを示した6人に、アサヒはふふっと笑みを浮かべて、仕事鞄を開ける。

とととんと6つ並べられたチョコレートは赤、青、緑、紫、黄、桃の異なる包装紙でラッピングされている。

「アサヒ!!マジでくれんの」
「女神か!!」
「うそ、本当に?!」
「・・・・・・・・あ、ありがと・・」
「チョコだー!」
「えー、すっごい嬉しい!!」

喜ぶ一同の前で

「3倍返し、期待してるわ」とアサヒは不敵な微笑を浮かべて呟いた。




______________________________________________

終われ。


ホワイトデー、昨日ですよ。
そんなツッコミを貰いそうな、今更バレンタイン。
昨夜、丁度バレンタインネタを見返したところだったもので・・・・。
あの話、好きです。可愛いし。
それにしても、何夢だ。これ。
まぁ、書いてて楽しかったのでいいや。
別に書いてる、カラ松が頭おかしい夢は、一向に終わらないのに、こういうのって時間かからないんですよね。まぁ、その分、短いですけど・・・・
映画も始まりますね。諸事情から観に行けませんが、Blu-rayになるのが楽しみです。(なるよね??)


アサヒさん、お付き合いありがとうございました。



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