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夢小説(その他)
学生 U(ネウロギャグ 警視庁)

神様がいるのなら、是非抗議をさせて欲しい。

私はアサヒと別れた後、ドS魔人と怪物強盗X・Iの魔の手から逃げなくてはならないのだ。

全力で。

失敗は許されない。

もし逃げ遅れれば、そこが私の墓場となるだろう。

だから、余計なトラブルに巻き込まれたくないのだ。

なのに、何故私はこんな状況に立たされているのでしょうか?


某私立校の制服に身を包んだアサヒは、女子高生には到底見えないオーラを纏いにっこり微笑み呟いた。

「聞こえなかったの?そいつを連れて失せろとあたしは言ったのよ」

事の始まりは単純

名前も顔も嫌になるくらい売れに売れた女子高生探偵 桂木 弥子という存在は否が応でも他者の目を引く。

遠巻きに見るもの、ひそひそと噂話を囁くもの、いろんな人間がいれば否定的な考えを持つものもいるわけで………

気分は良くないが日頃の鍛えられているせいか多少の言葉の暴力は聞き流せるようになっていた。

だから、アサヒの反応に驚いてしまったくらいなのだ。

ヤジを飛ばした青年の肩を叩き引き止めると、流れるような鮮やかな動作で肘を青年の顔面に叩き込み背後に回って首を腕で締め上げたのだ。

がくんと青年の膝が折れ意識が飛ぶまで5分とかからなかった。

これがアサヒが笑顔で呟いた言葉までの経緯である。

「聞こえないの?それとも理解出来ないの?」

苛立ったようなアサヒの言葉に動けた人間はいなかった。

どちらが悪いかと問われたら先に言葉とは言え、聞き難いヤジを飛ばした青年だろう。

ただ、彼がここまでされなければいけなかったかは、微妙なラインでもある。

「お友達、何でしょう?連れて帰ってあげなさいよ。それとも…………」

カツンとアサヒの靴が一歩踏み出す音が響く。

「全員仲良く沈めてあたしが救急車を呼んであげましょうか?」

アサヒの笑顔の提案に皆が逃げ出すまで時間はかからなかった。

まさに蜘蛛の子を散らすように消えた一同の中で、捨て犬のような顔で立ちすくんだ青年が一人。

その姿を見た弥子はここぞとばかりに噛みついた。

「石垣さん、見てたのなら止めてくださいよ!」

「ふざけるなよ、探偵ッ!あの状況が俺に仲裁出来ると思うか?!」

警察としてのプライドの欠片もないような発言に弥子の視線が泳ぐ。

「一瞬で顔面に肘を叩き込んだんだぞ!俺に何が出来るって言うんだ!」

あまりの卑屈な発言に思わず謝罪しそうになれば

「いやだなぁ、たまたまですよ。」

とアサヒが白々しく笑って見せた。

「本気で喧嘩して女のあたしが男に勝てるわけないじゃないですか」

明るいアサヒの発言を

「言われて見ればそうだな………」

と、呑気な石垣の言葉が追う。

この人って…………

弥子の呆れた視線にも気づかず石垣は明るく笑う。

その背後から

「弥子ちゃん………アサヒちゃん、その格好どうしたの?」

弥子からアサヒへと視線を映した人物は相変わらずの低いテンションで呟く。

「弥子が貸してくれたんですよ、似合いますか?」

「まぁ…………良いんじゃない。」

同じみの歯切れの悪い回答の後

「でもさ、その格好で暴れるのはマズいと思うけど?」

「暴れてませんよ。ちょっと沈めただけで。」

「どっちでも良いけど、学校に連絡行ったら弥子ちゃんが困るんじゃない?」

その言葉にアサヒは一瞬固まり
次の瞬間にはぽろぽろと涙をこぼした。

「だってぇ、あの人たち弥子に酷い事言ったんですよぅ」

手のひらを返す、そんな言葉は『今』を説明する為にあると………そう思った。

役者顔負けの名演技

ここだけ見たなら、か弱い女子高生が友の為に事を行ったようにも見える。

問題は友の為に行った行為が常識の範疇から逸脱している事だけだ。

「えーっと…………」

ポリポリと頬をかきながら、間延びした声を出した笹塚にアサヒはチラッと視線を向ける。

「結構自信あったんですけど、」

「あぁ…………演技ね。正直、どっちか分からなかった。」

淡々とした笹塚にアサヒは思い出に浸るように呟いた。

「父が生前よく言ってました。女は困ったら泣け。それで解決しなければ……」

一旦、言葉を区切ってからアサヒは明るい口調で続ける。

「関係者をコンクリ詰めで沈めろって!」

ハートマークでも振りまきそうな愛らしい笑顔でそうのたまったアサヒの口を弥子は慌てて塞ぐ。

「やっ、やだなぁ!アサヒってばお茶目さん☆」

「アサヒちゃん…そう言う事はあまり言わない方がいいよ。」

しっかり、聞かれてるぅう!本当に沈めたりしてないよね?!笹塚さんが追求しませんように。しませんように。しませんように。

そんな胸中をひた隠しにして

「そういえば笹塚さん、こんな場所で何をしているんですか?」

と話題を逸らす。

「………………アイツが、戻って来なかったから。」

意味深な間を取ってから笹塚は、ため息とともに呆れた視線を石垣へと送る。

視線の先、チビっ子たちに囲まれながらいそいそと百円玉をガシャポンへと突っ込む石垣の姿に弥子の口からも思わずため息が零れた。

「石垣さんって何か頼りないよねぇ、刑事っぽくないと言うか。」

「んー……でも、あたしは石垣さんの方がいいかな。うん。」

弥子のぼやきにポツリとアサヒが答えた。

「「え??」」

アサヒの言葉に対する反応は2つ。

ビックリしたような弥子と慌てて口元を抑えた笹塚、2人の声が重なった事で弥子の視線が笹塚へと注がれる。

「さ、笹塚さん…もしかしてっ」

弥子の顔が今世紀最大のニュースを聞いたかのようにニヤリと歪んだ。

こちらの顔から顔を背けた男を追求するように

「アサヒの事、好きなんですか?」

そっと耳元で囁けば生気のない顔に朱が浮かぶ。

「…………別に、ちょっと驚いただけだよ。」

取り繕ったような返答にお世話になっている彼の為…これは、一肌脱がなければと弥子の瞳がキラキラ輝く。

その為にもこの男には素直になってもらわなければいけないだろう。

そう考え、

「アサヒ、石垣さんの方がいいってどういう意味?」

と爆弾めいた言葉を投げかける。

「笹塚さんや、筑紫さん、笛吹さんより石垣さんの方がいいかな………って。」

ガシャンッ
ジャラッ
ガツッ

律儀にアサヒが答えた瞬間、見計らったように何かを落とす音が響いた。

鍵を落とした筑紫、落とした携帯を拾う笛吹、そしてヒビの入ったノートパソコンを見つめる匪口の姿が目に入った。

どうやら声をかけるタイミングを計っていたらしい。

おかげで登場シーンは最悪にも見える。

登場シーンだけは唯一の勝ち組である男へと視線を向ければけたたましい音など聞こえなかったようにぼんやりと虚ろな目をした姿が目に入った。

突然おとずれた事態に言葉を探す弥子に代わりいち早く立ち直った笛吹が鋭い怒声をあげた。

「石垣ッ!貴様勤務中に何をしているッ!」

「ッ!」

ビクッと身を竦ませた石垣の姿にアサヒが『笛吹さんが好き』とでも言ったなら見逃してもらえたんだろうなぁ………と頭の片隅で考えれば少年のような声が響きわたる。

「ちょっ、天野!俺はっ?!」

ガシッとアサヒの両肩を掴んだ匪口の形相に引きながら弥子はちらりと笹塚と筑紫へ視線を向けた。

ようやく立ち直った2人は無言のまま射殺さんばかりの視線を石垣へと送っている。

否、2人ではない。

3人だ。

「匪口さんは、論外」

と日本刀より鋭い言葉の刃で断ち切らた青年の悪意に満ちた視線がすでに加わっている。

「なんか、みんな様子が変だねぇ………」

ポツリと呟くアサヒにまたX・Iと入れ替わっている事を考えていた弥子の思考は打ち砕かれる。

このズレにズレた感性………もとい発言はアサヒのものに間違いない。

「そ、そうだねぇ」と尤も戦火から遠ざかる解答を選べば「比較しちゃ石垣さんに悪いとは分かっているんだけどね〜……」

とまた場を混乱させるような言葉がこぼれ落ちる。

石垣さんに悪い?

笹塚さんや筑紫さん、笛吹さんや匪口さんに、じゃなくて??

そんな弥子の胸中に浮かんだ疑問と同じ事を思ったのだろう。

視線だけは石垣に向けたまま彼らの聴覚が研ぎ澄まされているのが弥子にも分かった。

弥子の胸中に浮かぶ疑問を読み取ったアサヒは言葉を探しながら答える。

「もし今後、警察と喧嘩するなら石垣さんの方が勝率高いかなって事。笛吹さんの策略は怖いし、筑紫さんの冷静な判断力も厄介だし、笹塚さんの人脈や素早い決断力も面倒だし、匪口さんと同じ土俵で戦うには知識が足りないからね。」

軽く肩をすくめた発言に誰ともなく息を吐く。

勘違いだった。という安堵の息と共にまた張り詰めていく空気。

先ほどまでは共通の敵に薄っぺらな協力関係を築いていたとはいえ、今では互いが宿敵だ。

ピリピリとした空気の中、4人の男が互いの隙を伺っている。

先手必勝とばかりに動いたのは匪口だ。

「天野、今公開中のこの映画面白いって評判で今、『偶然』にも俺2枚チケットを「アサヒちゃん。釣りとか興味ある?良かったら今度の休み付き合って欲しいんだけど………」

偶然を強調した匪口の言葉を遮り笹塚はそんな誘いを口にする。

「釣り、ですか?あたしは、した事ないですねぇ。弥子は、確か釣りした事あるって言ってたよね?今度の休み暇?良かったら教えてよ。」

「えっ私?!私は、えっと、したと言っても一回くらいで……」

突然話題をふられ、うろたえる弥子に笹塚は冷たい視線を向ける。

『邪魔したら殺す』

そんな言葉さえ聞こえてきそうだ。

「それにっ、そのっ今度の休みは用事が…………。」

笹塚の目から視線を反らしながら答えれば

「弥子が行けないなら、あたしもご遠慮します。せっかくの休みを邪魔しちゃ悪いし………」

アサヒーッ!何て事をッ!

人がない知恵絞った回答を無に返しながらアサヒはにっこりと微笑む。

そんなアサヒの返答に「弥子ちゃん……」と呟く笹塚の顔には『コロス』の三文字が浮かんでいる。

室内の気温を下げるクールさは、今の彼には存在しない。

そこを好機とみたのかすかさず

「天野、今度の休み私と美術館にでも………」
「アサヒさん、今度の休み私に付き合っていただけませんか?」

と、笛吹と筑紫が声を出す。

「筑紫、お前いつから名前で………。」

発言の中で最も気になる部分を笛吹が咎めれば筑紫はふふっと意味深に笑う。

しかしその笑みも

「弥子が今度の休みは用事あるみたいなんで、また今度誘って下さい」

そんな残酷な言葉を愛らしい笑顔で放つアサヒにかき消される。

「桂木弥子………貴様…………」

怒りに震える笛吹と冷たい瞳の筑紫に睨まれ弥子は慌ててアサヒの背に隠れる。

何でッ?!何で私のせいッ?!

そんな言葉で胸いっぱいな弥子は必死に視線をさまよわせ、殺気を放つ笹塚の後ろに立つ匪口へと縋るような瞳を向ける。

真打ち登場とばかりに2枚のチケットを掲げた匪口は笹塚を押しのけアサヒへと近づく。

「天野、映画行かない?これ面白いって評判で……」

匪口の顔とチケットを見比べたアサヒは

「下さるんですか?」

と小首を傾げる。

小動物のような愛らしい仕草に心臓を高鳴らせながら頷けば「ありがとうございます。弥子、映画行こう」

そんな言葉とともに2枚のチケットが攫われる。

「えっ、違ッ?!」

そうじゃないとばかりに慌てた匪口の言葉にアサヒは『くれると言ったのに…』と落胆の色を浮かべている。

今更、「俺と行こう」とは言えない空気。

勿論、言えば返してくれるだろうがデートには誘えそうもない。

「何でもないデス」

諦めとともに呟く匪口の目は恨めしそうに弥子を睨む。

また私のせいッ?!

泣き出しそうな弥子の前でアサヒは何度か『本当に良いのか』と確認してから嬉しそうに礼をのべた。

「弥子、行こうッ」

にこやかなアサヒに手を引かれ弥子は、殺意を込めた瞳の男たちの前から逃げ出した。

泣きながら。



天国のお父さんへ

今日私は、ドS魔人と怪物強盗X・Iだけでなく日本の警察を敵に回しました。

アサヒに悪気がない事はわかってますが、もう少し周りの感情に敏感になって欲しいです。

まさにアサヒは、私にとって『両刃の剣』

アサヒのそばにいる限りそこは究極の安全地帯

しかしそこは、最も敵を作る激戦区なのです。

映画の内容など頭に入りませんでした。

アサヒと別れるまであと数時間。

敵が3倍に増えた今、私は無事に逃げる事が出きるのか不安でたまりません。

助けて下さい。




―――――――――


天野さんのリクエスト ネウロ学生ネタで警視庁バージョン。

筑紫さん、本当は「自分」って話すんですよね………(汗)
(キチンと確認してませんが……読んだ限り)
でも『自分に付き合って下さい』より『私に付き合って下さい』の方が良いかなと…………そうでもないかな…すみません。

天野さんリクエストありがとうございました。

アサヒさんお付き合いありがとうございました。



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あきゅろす。
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