[携帯モード] [URL送信]

夢小説(その他)
チャンスの神様は(ソウルイーター ジャスティン)

「…………ロン」

澄んだ声に、ざわりと空気が震える。

ぼやくような周りの声とともに差し出される点棒を受け取りながらアサヒはにぃっと口のはしをあげて笑う。

「アサヒちゃん、今日は調子いいねぇ。」

「…………ツキが回ってきてるんですよ。こんな時は……」

アサヒが言葉を言い終わらないうちに荒々しく扉が開く。

「見つけましたよ。アサヒさん」

「うわ、ついてねぇ」

扉から顔をのぞかせた人物を見るなりアサヒはそんな声を上げる。

「逃げるようなら手加減しませんよ。」

涼やかな言葉にアサヒは両手を上げ、降参のポーズを取る。

「せっかく、ついてたのに…」

と不満の声を上げる事も忘れない。

ズルズルと首根っこを捕まえ引きずられていくアサヒにメンバーたちが手を振る。

「アサヒちゃん、またおいで〜」

「は〜い」

なんて明るい声を出して手を振れば鋭い瞳がこちらを向く。

軽く肩をすくめれば、呆れたようなため息の後で青年の瞳は前を向く。

後ろ向きに引きずられている為、彼の顔は確認できない。

穢れなんて知らない純真無垢な顔をしてるんだろうなぁ…

なんて考えてみれば鈍い痛みとともに彼の青い瞳と目が合った。

彼の後ろに広がる澄んだ青空を見ながら、ふと彼の瞳は空と同じ色なんだな…なんて今更の感想を抱く。

背中に当たる冷たい石畳の感触が妙に気持ちいい。

「アサヒさん、いつまでそうしているんですか?行きますよ。」

涼やかな青年の声

差し出される手

思わず縋ってしまいたくなるけど…あたしは体を起こし汚れた衣服をはたく。

差し出されたままの青年の手は、行き場を失ったようにゆるゆると落ちた。

「ジャスティン=ロウ」

「何ですか?」

高い位置から注がれる瞳はあまりに綺麗でこの世に溢れる穢れを片っ端から教えてあげたくなる。

「今から死神様のところに行くでしょう?」

「はい」

「多分、お叱りを受けると思う」

「そうですね」

「心の準備期間があっても良いと思うんだけど……?」

そう問えばジャスティンは一瞬きょとんとした顔をしてから見慣れた微笑を浮かべる。

「いい考えですね」

教会にある天使たちは彼のように笑う。

否、彼が神のように…天使のように笑うのだろうか?

「それで、何をするんですか?」

そう問い返す青年にアサヒは口のはしをあげ、

「瞑想」

と答えた。




「あたしが終わったって言うまで、付き合ってね」

そう問えば、ジャスティンは目を閉じたまま「はい」と答える。

ゆっくりと後ずさりながらの言葉は彼の耳を、そして全身を騙す。

あたしがその場から逃げ出すまで5分とかからなかった。





チャンスの神様は前髪しかない。だからこちらに走って来た時に捕まえなくてはならない……

とはよく言ったものだ、とアサヒは思った。

順調になくなっていくパチンコ玉にため息をつき、画面を見つめる。

そろそろやめないと、大損してしまうな。

そう財布と相談しながらアサヒはまたため息をつく。

チャンスの神様は、どうやらすでに通り過ぎてしまったらしい。

麻雀を途中でやめさせられたのは痛かったなぁ…と今更のようにため息をつき、最後の球が機械に飲み込まれていく様を見つめる。

空箱を戻し、外に出れば冷ややかな空気が頬を撫でアサヒは身震いをした。

「寒ッ…」

暑いくらいに温められた店内から出てきた事もあり凍えてしまいそうだとくだらない事を考える。

ゆっくりと白い息を空へ吐き出しアサヒは上着のポケットへ両手を突っ込んだ。

昼間は心地よかった石畳が寒さに拍車をかけるようでアサヒは足早に石畳を歩く。

ゆっくり歩けば歩くほど足元の石畳に熱を奪われてしまいそうだ。と考え思わず笑えば聞き慣れた声が響いた。

「おい、ジャスティン!こんなとこで何やってんだ…お前。」

その言葉にドキリとする。

律儀に先ほど見た姿勢のままベンチに座った青年は呼びかけられた声にも答えず目を閉じている。

「おい、ジャスティン!」

呆れにも心配にも聞こえる声に、青年はゆっくりと目を開く。

すでに夜の気配を纏う空の下でその瞳は明るい空色だ。

「なんですか?」

不機嫌そうなジャスティンの声にガシガシと長い髪をかき乱しながらデスサイズは肩をすくめる。

「なんですか?じゃねぇだろ!お前こそこんな場所で何してんだよ」

「アサヒと瞑想していたんです。彼女が終わりを告げるまで付き合うと約束しました。」

「はぁ?!じゃあ、肝心のアサヒはどこにいるってんだ?」

大袈裟な身振り手振りで問いかけるデスサイズにジャスティンは相変わらず柔和な笑みを浮かべる。

「開始5分で逃げられました。」

その解答にデスサイズの顔にはもどかしそうな色が浮かぶ。

「逃げられたって……お前」

「でも約束は約束ですから。」

そう答えるとジャスティンはまたゆっくりと目を閉じる。

空色の瞳が金の睫に飾られた白い瞼に隠され…何とも言い難い気持ちになれば、デスサイズがあたしの気持ちを代弁する。

「それって逃げる為の口実だろ?騙されてんじゃねぇのか?」

そうよ、逃げる為の口実!!子供にだって分かるでしょ?!

そう胸中で呟けば、目を閉じたままジャスティンは答えた。

「私はアサヒを信じています。彼女を信じる事が出来ない私を何故彼女が信じられるでしょうか?」

屁理屈のような回答

馬鹿みたい。

いや、彼は馬鹿だ。

あたしなんかを信じるなんて――――



話しても無駄だ

そう思ったのかデスサイズは「風邪引くなよ」なんて呟いて踵をかえす。

残ったのはあたしと間抜けな聖職者

「お帰りなさい、アサヒさん」

目を閉じたままジャスティンが呟く。

「瞑想は終わりにしますか?」

続けられた言葉に肯定すれば、澄んだ青い瞳がゆっくりとあたしを見つめた。

「騙されたのよ?あたしは逃げたかっただけ…………」

「戻って来られたではありませんか。」

懲りない回答

ジャスティンは一度にこりと笑ってから目を伏せ静かな声を出した。

「アサヒさん、実はあなたとの約束を破りました。途中で目を開けてしまったんです。許して、いただけますか?」

馬鹿みたい。

重罪人に罪人を裁く権利などあるワケがない。

黙り込んだあたしにジャスティンは儚げな微笑を浮かべ続ける。

「あなたとの約束を破った私を許して下さいますか?」

「―――――あたしにあなたを糾弾する権利はないわ」

あたしの言葉にジャスティンは首を振り答えた。

「私はあなたの許しが欲しいのです。」

深いため息を吐いてから「許すわよ!お互い様だものッ!これでいい?!」と突っ樫貧に答えればジャスティンは満足そうに笑って十字をきった。

「ありがとうございます。」

と、意味不明な礼を述べてから、ジャスティンは静かな声で呟く。

「アサヒさん、私は賭事の類はしないのですが………勝負に出る時はそれがチャンスか否かどこで見極めるのですか?」

突然の予想もしない問いかけに一瞬固まってからあたしは唸る。

そんなものがあるならあたしが知りたいくらいだ。

直感と閃き

そんな根拠の欠片もない回答で良いのだろうか、と悩みながら

「自分が勝負所と思った時で良いんじゃないの?ほら、チャンスの神様は何時も走っていて、前髪しかないから自分に向かって来てる時に即座に前髪を掴むしかないって言うじゃない。」

曖昧なあたしの回答になるほどと深く頷いてからジャスティンは微笑んだ。

「二人きりの今が神が与えてくれた勝負の時なのだと思います。アサヒさん、私はあなたが好きです。お答えをいただけますか?」

こちらの言葉を見透かすようににこりと笑うその顔は、天使のフリをした悪魔みたいに見えた。





―――――――――


アサヒさんの回答を頂く事なく終了(笑)久しぶりのソウルイーター夢でした。
さり気なくデスサイズと話す時にアサヒさんを呼び捨てするジャスティンさんでした。


アサヒさんお付き合いありがとうございました。

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!