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夢小説(その他)
蜘蛛の糸(ZONEー00志萬安吾)
「ひっく…ぐす…」

「何時まで泣いてるつもりなん、自分」

「アンタにはっ…分かんないわよ。」

キッと此方を睨む瞳は、泣きはらした為充血し綺麗といえる姿ではない。
頬には涙の跡が残り、悲惨の一言だ。

女の泣く姿は、もっと美しいものだと思っていたけど…。

その言葉を飲み込んで、ゆっくり息を吐き出せばアサヒはまたぐずぐずと鼻を鳴らす。

「…そもそも何で泣いてるん?」

見つけた時にアサヒは、一人でボロボロ泣いていて…泣きすぎて嗚咽もまともにもらせないような状況だったから聞くに聞けなかったのだ。

志萬の言葉にアサヒはくしゃりと顔を歪め、叫んだ。

「弁天さんが…弁天さんが男(ヤロウ)だったなんてぇ!」

………

「裏切られたのよ!信じてたのに!!神が作ったとも思えるあの美貌、細く綺麗な足と腰、なのに男ってどういう事よぉ!」

「俺に言われても…ってか気づいてなかったん?」

呆れたような志萬の言葉にアサヒは深い深いため息を吐く。

「はぁ…もう無理。何も信じられない。」

ずぅーんと重たい空気を背負い呟かれた言葉にはこの世の不幸を詰め込んだような暗さがあった。

「うぅ…弁天さん、…」

「アサヒ、一応言うけどな。お前“女”やろ?弁天が男で困る事ないやん。むしろ・」

「…童貞が偉そうに語ってんじゃねぇよ。」

志萬の励ましは、吐き捨てるようなアサヒの言葉にかき消される。

「なっ…、言うとくけどな、当たり前やん。まだ14、過半数は未経験じゃ、ボケ!」

「そうなの?九浄は経験済って言ってたし、現代の若者の性は乱れているってこの前読んだ本に書いてあったよ。」

「もう、ええわ。人が折角励ましとんのに…そないに女がええなら姫もマジョコもおるやんか!」

「人の女に手を出す趣味はないわ。」

ムスッとした志萬の言葉にアサヒは、静かな声で答える。

「はぁ…もうダメ。心が枯れそう。あたし、このまま死んでしまうかも知れないわ」

「アホらし…」

「そこで、志萬くんにお願いがあるんだけど…」

嫌な予感がする。
縋るように見上げてくる様は、どこか幼く愛らしいものがあるが…聞いてはいけない。そんな気がするのだ。

「女装してくれない?こうなったら一時凌ぎで構わないわ。キミは顔可愛いし、体も細いし似合うと思うの」

「嫌に決まってるやろ!アホか!」

「人間って冷たいのね…」

ふぅ、と息を吐き出しアサヒは小さく呟いた。

「…あぁ、東京って冷たい街だわ。田舎に帰ろうかしら。」

「帰る…?」

「あたし…鬼にも薬にも興味ないのよね。興味あった弁天さんは男だったし、何も思い残す事はないわ。東京は、あたしの巣にするほど住みやすい場所じゃないし。」

先ほどまで泣いていたと思えないほどはっきりした口調で言うとアサヒは志萬を見る。

「志萬くん、慰めてくれてありがとう。あたし、キミのそういう優しい所好きよ。」

にっこりと笑う、その姿は綺麗だと思う。特別優れた容姿ではないと言うのに…

「別に、急いで帰らんでも良いんちゃう?時間はあるやん」

引き止めるような言葉に言った事に自分でも驚く。

案の定、言われたアサヒはもっと驚いていた。

「あたし、人間にそういう事言われたの初めてだわ。」

「いや、別に他意はないねんけどっ!」

多分、自分の顔は今真っ赤だと思う。

「志萬くんって良い人だね。でも、女郎蜘蛛にそんな事言ってたら食われちゃうぞ。」

クスクスと笑う姿は、人間と変わらないというのに…彼女は人間に恐れられる魔物(モノノケ)なのだ。

「キミも寂しいって言ってくれた事だし、もう少しここにいようかな。」

「別に俺はっ…」

顔が熱い。まともにアサヒの顔が見れない。

「キミに慰めてもらって借りが出来ちゃったしね〜…。借りは返すよ。それに、キミが気に入った♪あたし、男は嫌いだけどキミは特別みたい。」

だから、これからよろしくね☆

そう笑うアサヒは、甘く優しく…この身を絡め取っていく。

その糸で身動きが取れなくなってから、自分の愚かさに気づくのだろうか…?


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志萬くんの話し方がさっぱりわかりません。アサヒさん、お付き合いありがとうございました。

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