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裏夢
思いちがい(ZONE-00)
※主人公は、志萬くんが白狐を好きだと思ってます。苦手な方は、ご注意下さい。


「志萬くん♪」

変なリズムをつけながら名前を呼んだ女を安吾は面倒くさそうに見る。

にんまりと笑うその顔からは、何か良くない事が始まる嫌な予感がした。

ソファーに腰掛けている安吾の前に立つとアサヒは目を輝かせ呟いた。

「志萬くんの恋が実るように協力しにきました」

「………。」

ものすごく複雑そうな顔をしたこちらに気づいていないのかアサヒはニコニコと笑う。

「白狐が出掛けてる今しかこんな話出来ないと思って…」

アサヒの的外れな言葉に安吾は深い深いため息をつく。

何をどう勘違いしたのか、目の前に立つ女郎蜘蛛は俺が白狐に恋心を抱いていると思っている。

本来、淡い思いを抱いている相手は目の前に立つ自分自身だというのに…。

「あんな、アサヒ…前にも言うたと思うけど俺、白狐に恋心とか抱いてへんから」

何十回目になるかわからない言葉を口にする。

その言葉を聞く度返ってくる反応は同じなのだけど、今度はちゃんと伝わるんじゃないかという気持ちと…
「心配しなくても誰にも言わないわ。あたし、応援するから頑張って!」

ふわりとした、愛しい我が子を見つめる母親のような優しい笑み。

この顔が見たいから言ってしまうのかもしれない。

不毛だとわかっていながら…





「…それでね、恋愛経験豊富そうな黒薔薇に色々恋愛のいろはを教わってきたの。」

「ふーん」

適当な返事にも、アサヒは笑顔を崩さない。

「それで…一番良い方法は、夜這いだろうと…だから志萬くんの予定を聞いておこうと思って」

「…」

今、聞き流せない言葉が飛び出た気がする。

「今、何て?」

「だーかーらー…黒薔薇に相談したら夜這いかけたら早いですよ。って言われたの。でも、人間の志萬くんと魔物(モノノケ)の白狐じゃ、ちょっと力の差があるでしょ?だからあたしが手伝ってあげようと思って☆大丈夫。あたしの糸に絡め取られたら、白狐といえと身動き一つとれないわよ。多分」

多分?!

いや、問題点はそこじゃない!

「いざって時は神経毒もあるし、志萬くんは何にも心配しなくて良いからね。」
爽やかな微笑。

あぁ、神様

俺にとってあなたは否定する為にいる

でも、今だけ信じます。

いや、マジで。

だから彼女に、アサヒに常識を与えて下さい。

アサヒと結ばれたいなんて大きな願いは言いません。

ただ、俺の想い人が白狐ではない事に気づいてくれれば十分です。

「思い立ったが吉日と言うし、今夜決行しよう!」

まるで遠足前の子供みたいに輝いた瞳

「アサヒ、と、とりあえず座り…」

自分の隣を指し示せば、アサヒはちょこんと腰掛ける。

どう説明したものか…、頭を悩ませる安吾にアサヒは真面目な声を出す。

「志萬くん、不安なのはわかるわ。でも大丈夫よ。君は可愛いから」

自信を持って☆と励まされても嬉しくない。

「…アサヒ、俺がっ…俺が好きなんはっ…」

喉が乾く。

心臓が煩い。

アサヒの真っ直ぐな瞳に言葉がなかなか出てこなかった。

ぎゅっとアサヒの手を握ると、安吾は大袈裟なくらい深呼吸を繰り返す。
「俺はっ…「ただいま〜」

扉を開く音と同時に呑気な声が響く。

「あっ」

アサヒがその人物を見て声を出した。

「おっと…お邪魔だったかな」

悪戯っぽく笑う白狐の視線は、アサヒの手を握っている自分に向けられている。慌てて手を離せば、白狐は喉を鳴らして笑った。

「気にせず続けていいよ」

にっこりというよりも、ニタァとした笑みを白狐は向ける。

恥ずかしさのあまり、耳まで真っ赤にした安吾を見てアサヒは慌てて声を出した。

「ち、違うの!」

「違うって何が?」

楽しげな白狐の言葉にアサヒは高らかに答えた。

「あたしが、志萬くんを操ったの!志萬くんは何も悪くないわ!」

その言葉を聞くなり白狐は腹を抱えて笑う。

「だから、心配しないで!」

「…心配?」

アサヒの口から零れた言葉に白狐の笑い声が止まる。

代わりに出てきたのは、訝しげな声だ。

「…あ〜、もうじれったいなぁ!あたしは、気づいているんですよ。」

「何に?」

「白狐のキ・モ・チ」

白狐の問いかけに、語尾にハートマークがつきそうな口調で答えるとアサヒは、頬を赤らめた。

「だって、白狐ったらあたしと志萬くんが一緒にいると何時も志萬くんの様子を見てるでしょ…?」

白狐の顔に浮かんだ表情をなんと例えれば良いだろう。

「心配しなくても、愛し合う2人を引き裂くような無粋な真似はしませんよ」

その言葉に白狐の顔が引きつる。

ガッと安吾の肩を掴むと叫んだ。

「何で僕が君を愛してる事になってるの!」

「俺が知りたいわァ!!」

安吾の叫びにアサヒはニコニコと笑う。

「志萬くん、白狐…お幸せにね!今日は、誰もここに来ないように連絡しておくから!」

走り去るアサヒの背に向かって2人は悲鳴をあげるのだった…。




 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


裏夢で女郎蜘蛛主人公って事は、これで良かったのでしょうか??
アキハさん、違っていたら連絡下さい。


アサヒさんお付き合いありがとうございました。

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